「業務が増えても残業なし」「年間712.7時間の業務量削減」、、、統計データ利活用センターの挑戦

霞が関で実際に行われた改革、その知見をシェアし表彰することで更なる改革を促進する目的で開催されたピッチイベント『第1回・意外と変われる霞が関大賞』。

改革派現役官僚有志団体「プロジェクトK」が主催し、審査員として河野太郎氏、WLB代表の小室淑恵氏、千正組代表で千正康裕氏(元厚労官僚)、オブザーバーとして人事院総裁の川本裕子氏などが参加。

その様子を詳細にお届けします。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、主催者の了承のもと、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※文中の話者の肩書は、イベント当時のものとなります。また、発言は個人の意見であり、所属する組織に帰属するものではありません。

業務量は増大、職員数は据え置き。でも、”ほぼ残業無し”

プロジェクトK 4期副代表 栫井 誠一郎(以下、栫井氏):それでは、統計データ利活用センターにおける業務見直しの チャレンジということで統計データ利活用センターの方々になります。よろしくお願い致します。

総務省 統計局 統計データ利活用センター センター長 赤谷(以下、赤谷氏): 総務省 統計局 統計データ利活用センター センター長の赤谷と申します。本日は、加えて丸井と山本を合わせた3人でプレゼンをしたいと思います。

赤谷氏:実は我々、今回和歌山からやってきました。まず「なぜ、和歌山なのか」から、ご説明をしたいと思います。

我々は、4年前に中央省庁の地方移転の取り組みの一環として、総務省及び独立行政法人統計センターのデータ利活用を推進する部門が和歌山に移転してきました。

赤谷氏:このスライド(下画像)で挙げたような業務を行っているのですが、事業の委託件数、利活表彰とコンペの応募件数、それからデータ分析の拠点設置件数といった業務は、4年間でどんどん増えているものの、職員数はほとんど増えていない。

ですが、残業はほとんどしていないという状況であります。

赤谷氏:なぜ、こうしたことが実現出来ているかを紹介していきます。まず、オフィスの様子をご覧ください。

赤谷氏:このように和歌山の紀ノ川を眺められる場所にオフィスを構えており、フリーアドレスの執務室で仕事をする。それからコロナ前から、基本リモートで働くことを意識しております。

全国津々浦々の皆様といろんなところで仕事ができるように、常にweb会議が前提となる会議室、それからいろんな意見交換、それからスケジュール共有を交わせるホワイトボードとか集中作業ができるカウンター、いろいろ用意しております。

全体のレイアウトとしてはこんな感じですね。

『60点主義』が後押しする職員の挑戦と好循環

赤谷氏:様々な働き方に応じて場を提供できるアクティビティ・ベースド・ワーキングを実現できるように、オープンな環境ながらもプライバシーを守れるように少しスピーチプライバシー(※)にも取組んでおり、ざわざわって音をあえて出し、音声をブロックするという工夫もやっています。

他にも、各スペースの名前を職員に公募してオリジナルの看板を作るなど、自由な発想ができる職場づくりを心がけています。

※スピーチプライバシー…会話の内容が第三者に漏れ聞こえてしまうことを防ごうという考え方で、吸音、音の遮断、マスキングなどの方法がある。

フリー アドレスを導入しても、自然と席が固定化してしまいやすいので、毎朝ディスプレイにランダムに生成された座席表を表示していて、テレワークしている人、登庁している人を考慮してマクロでランダムに座席を割り当てて、常に新鮮な気持ちで仕事ができるようにしています。

赤谷氏:このマクロ、職員オリジナルで作ったんですが、その際に重視したのが『60点主義』というものです。

初代政府CIOで現在はデジタル庁参与の遠藤紘一氏が提唱するもので、基本的な考え方として「細かくサイクルを回す」ということなんですね。最初は60点で良い、残った40点の6割を次にとる。そして、残った16点の6割を取る。

赤谷氏:そうして、3回のサイクルを回すと90点越えるので、最初から完璧を求めずどんどんとサイクルを回していくことを重視しております。

我々はデータ利活用推進部門のため、業務の中でもデータがどう回っているのかを業務管理の中でもしっかりと進めていきたいので、実際に皆さんスケジュール管理表とか会議実績、テレワークの勤務体制、どうやって交代制勤務するか等、色々と考えていくと「まずは帳票をつくっちゃう」となりがちだと思います。

ただ、よくよく考えるとこのデータってスケジューラから出てきていることを突き止めて、「じゃあ、(スケジューラの)記載ルールをしっかりと整備すれば帳票類全部なくせるよね」ということで元々あった帳票類を全部なくしました。

一定の仮説の下で試算すると、年間712.7時間の業務量削減効果が得られたということになります。

赤谷氏:こうした業務の流れの見直しだけではなく、心理的安全性を高めるチームビルディングの取組として、マシュマロチャレンジというものも始めています。

これは、パスタとマシュマロを使って、より高い塔を作ったチームが勝ちというものになります。

赤谷氏:総務省の課・室長クラス以上は、全員『働き方宣言』をつくって、共有しないといけないんですけれども、そうしたものを壁に掲示することも実施しています。

赤谷氏:ということで、プレゼン以上となります。ありがとうございました。

栫井氏:ありがとうございました。和歌山からということで熱意が伝わりますね。では、質疑応答の方、河野さんお願いいたします。

自由民主党広報本部長 河野 太郎(以下、河野氏):皆さん和歌山にいないとダメなんですか。テレワークがこれだけ進んでいる中でその和歌山に十何人いないと仕事ができないのでしょうか。

赤谷氏:普段は仕事をどこでも出来るって状況になってますけれども、我々チームのほぼ半数ぐらいが出勤しているという状況で、和歌山という場所自体がワーケーションのような感じで、(業務時間外では)東京では出来ないことをやるとか、そういったところを楽しんでいるところはあります。

私は、着任してからだいぶ日焼けをしてしまい、そこからも楽しんでいる様子も伺えるかもしれません。現地で今回採用している職員もおりまして、そうした普段東京のオフィスだけではできない雇用の創生ということもできてるのかなと思っております。

栫井氏:小室さんお願いします。

株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室 淑恵(以下、小室氏):ありがとうございました。

やめる仕事をやめきる』のは本当に大事ですが、一方で非常に難しいことだと思います。なぜ、やめ切れたのでしょうか。

赤谷氏:これは我々の中で働き方に対するビジョンを共有するということですね。

「これでちゃんと(その業務をやめても)代替出来ているよね」ということ示して、「その検討を失敗してもいいんだよ」という姿勢を職員同士が共有し、その背中を押すことを重視していることにあると思っています。

総務省 統計局 統計データ利活用センター  丸井(以下、丸井氏):今までの業務をもっと短縮(効率化)できる可能性があるんだよということについて、センター長が日頃から職員に発信しているのですが、そのような意識は重要かと思います。

栫井氏:では、次に千正さんお願いします。

株式会社千正組代表取締役/元厚生労働省官僚 千正 康裕(以下、千正氏):オフィス環境改善はすごくいいと思います。ただ、そうしたものを要求すると査定官庁には厳しいことを言われることもあると思うんですけど、その辺りをどう突破したのかが分かれば教えてください。

赤谷氏:予算はなく、財源は既存の業務を見直すことで経費を捻出したものです。なので、調査研究等の効率化による節約経費等をかき集めて取組を行っています。

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・記事協力:プロジェクトK
・編集・デザイン・ライティング:深山 周作