全ての人に、より良い働く環境を 〜障がい者の工賃アップのための取り組み〜|チャレンジナガノ2023 DEMODAY #3

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

2021年度に始まったこの取り組みは、3年目を迎えました。

1年目は60者、2年目は51者、3年目は61者と、引き続き、多くの企業からの応募を集めています。

2024年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2023 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

全ての人に、より良い働く環境を 〜障がい者の工賃アップのための取り組み〜

千曲市 福祉課 橋立 氏(以下、千曲市 橋立):千曲市役所 福祉課の橋立と申します。よろしくお願いいたします。千曲市におけるチャレンジナガノの取り組みについて報告させていただきます。

千曲市 橋立:まず、千曲市の簡単な紹介です。千曲市は長野県の北部に位置し、面積が約120k㎡、人口約59,000人の都市です。千曲市の魅力としては、高速ジャンクションによる高速道路の利便性や、規模が大き過ぎず事業を進めるにはちょうど良いところ、また自然と文化、近代化が融合しているところが特徴となっています。

千曲市 橋立:今回千曲市として取り組みたいことですが、まずは「障がい者の工賃アップのための取組」について皆さんのお力を借りられればと思い応募しました。障がい者は経済的な面やQOLの面で課題があります。

その中で障がい者福祉施設はなかなか商品が売れず、障がい者の方に工賃をたくさん支払えないという課題がありました。千曲市としても事業所とのつなぎや財政的支援を行いながら、今回民間企業の皆様に、販路の確保や商品開発についてお力をお借りできればと考えておりました。

千曲市 橋立:チャレンジナガノの現状までの経過報告をさせていただきます。

千曲市 橋立:多くの企業様からご提案をいただき、本当にありがとうございました。応募いただいた企業様が12社、書類選考後ウェブにより説明をいただいた企業様が5社、キックオフミーティングを開催させていただいた企業様が2社、応募の中から今回とは別の地域課題解決に向けて協議を進めさせていただいた企業様が1社となりました。その中で、キックオフミーティングを開催させていただいた企業様について少しご報告を申し上げます。

千曲市 橋立:1社目、株式会社アイデアプラス様は「共感を積み上げる」を大切にし、顧客との伴走をしながら、また幅広い取組実績があるという企業様でした。

ウェブによる選考の中では、市町村ができるのは、あくまで側方支援ということでしたので、対象事業所を動かすには、アイデアプラス様の持つ熱意やキャラクター、そして共感と伴走を主軸とした事業展開の手法論がとても有効だと感じました。

今まで実際どんなことをしてきたかといいますと、キックオフミーティングの後も打ち合わせを重ねまして、令和6年2月に対象事業所6社とのワークショップを開催しました。いかに共感させるアイデアを生み出すかについて皆さんで学びました。今後も引き続き中長期的な事業化の可否についても検討を重ねて行きたいと考えております。

千曲市 橋立:続いて2社目、地域力創造株式会社様です。地域力創造株式会社様は、最終的には行政の支援に頼らない「自走」できる事業をテーマにしてございます。また「地域力創造アドバイザー」としての経験や、自社の持つ人脈などを活かしながら、市町村が提示する課題にこだわらない事業、そのために活用できる助成制度などについての提案も行い、より効果的な事業展開をサポートしていくというスタンスでございます。また事業として成り立つのであれば、その地域に事業所の開設も視野に入れているという特徴がございました。

採択の理由につきましては、他事例によるブランディングに対する取組実績の他にも、地域力創造アドバイザーの活用やふるさと納税との連動など、財政的な部分も含めて市町村の立場を考慮した事業提案があったことでございます。

「障がい者の工賃アップのための取組」にとどまらず、空き家対策、荒廃山林、農地活用、デジタルマーケティングの活用など、他分野にまたがる行政運営に対する熱い思いを受け、何か一緒にやれることがあればと感じました。

今までの取り組みにつきましては、キックオフミーティングの後、令和6年2月に、庁内の部局をまたいだ関係課と今後の事業展開についてミーティングを実施しました。今後「障がい者の工賃アップのための取組」も含めながら、さらに横断的な事業展開についても何かできることはないか、検討を重ねていくところでございます。千曲市からは以上となります。

株式会社アイデアプラス:就労支援B型工賃UPに向けて

株式会社アイデアプラス 清水 氏(以下、アイデアプラス 清水):アイデアプラスの清水と申します。本日はよろしくお願いいたします。千曲市様と一緒に「就労支援B型工賃UPに向けて」の取り組みをさせていただきました。

アイデアプラス 清水:今日のアジェンダですが、簡単に会社の説明と、2024年度の進捗の共有、チャレンジナガノについて発表させていただければと思っております。

アイデアプラス 清水:アイデアプラスは「デザイン思考」という考えを用いて事業開発や商品開発を行い、それを「共創」という形で一緒にプロジェクトを展開している会社になります。

「デザイン思考」とはなんだという方も多いかと思いますが、外資系のGoogleさんやAppleさんも活用する課題解決手法です。デザイナーが機能を考慮したデザインを設計する際に用いる考え方を、企業に置き換えて企業が抱える課題に対して活用する手法になります。

課題解決にあたり難しい課題が増えてきていますので、コンサルティングとしてノウハウだけの提供で終わるのではなく、「共創」という形で伴走して、ユーザー様に寄り添ったサービスを展開している会社です。

アイデアプラス 清水:次に2024年の進捗に関してです。就労支援B型工賃アップに向けての構想とビジョンということで、方針としては、千曲市様のサポートをいただきながら就労支援B型事業者様とともに工賃アップを考えていくというものです。12回のミーティングとワークショップを開催して、工賃アップをどのように実現していくのかを一緒に考えていく形で進めております。

アイデアプラス 清水:その中でまず、就労支援B型事業者様のことを深く知るといったところからスタートしておりまして、現段階の実施状況を報告しますと、オンラインのミーティングを3回実施して、ワークショップを1回開催させていただきました。

アイデアプラス 清水:1月上旬にキックオフミーティングを行い、この3月末までにどうしていこうかというスケジュールの確認をPublink様ファシリテーターのもとで進めさせていただきました。1月下旬に2回目のミーティングを実施し、ワークショップをどのように開催していこうかといった中で、千曲市の橋立様、ワークショップ開催に向けて事業者様との連携を図ってくださり、2月中旬に実際にワークショップを実施することができました。

2月末に振り返りミーティングを行いましたが、持続的な工賃アップに向けて今後どのように取り組んでいこうかと議論している最中です。

次回3月12日に意見出しのミーティングを予定している状況です。

アイデアプラス 清水:実施したワークショップですが、就労支援B型事業者様が6社参加してくださいました。参加された方から好評をいただきまして、またこのような機会があればぜひ参加したいという意見をたくさんいただきました。しかし、実際に現場で働く責任者の方が今回参加してくださいましたが、経営者の方々になかなか参加していただけなかったことが課題として残り、また、普段は1社の企業様の課題に対してアドバイスや一緒に考えていくことを提供しているため、今回6事業者様と一緒にワークショップで課題解決していかなければいけないという点が難しいところでした。

さらに課題としてはもう一点。今回は橋立様のお力添えがあり費用を算出できたのですが、ワークショップを継続して開催していく際の資金的な面で難しさを感じております。

アイデアプラス 清水:千曲市様の強みというのは、橋立様が非常に動いてくださるといったところで、橋立様のおかげで企画を実現していくことができました。ハンズオンの支援を受けてみて、安心安全のファシリテーションを実行してくださいましたので、この辺りの安心感といったところで松本様には本当に「感謝・感激・雨あられ」です。

以上アイデアプラスからの発表となります。

Publink 栫井:ありがとうございます。松本も喜んでいると思います。では続きまして、地域力創造株式会社様、よろしくお願いいたします。

地域力創造株式会社:地域で自走する事業づくりを目指して

地域力創造株式会社 近藤威志 氏(以下、地域力創造 近藤):よろしくお願いします。地域力創造株式会社、コンタケこと、近藤威志です。

地域力創造 近藤:私自身長野生まれ横須賀育ちで、2001年以降、12法人50以上の事業立ち上げをしてきました。私は起業家で事業家であるということを自負しながら、地域で自走する事業作りに全国でチャレンジしている者です。2019年に総務省地域力創造アドバイザー、2023年に内閣府地域活性化伝道師を拝命いたしまして、様々網羅的に取り組ませていただいているものです。

地域力創造 近藤:今本社ビルを2013年にビル一棟衝動借りして、100パーセントセルフリノベーションで場作りをしていたりとか、その延長で全国のまちづくりに広がっていったというような流れです。

地域力創造 近藤:我々「常に革新を続ける地域課題解決ソーシャルベンチャーです」ということを標榜しておりまして、様々潜在化している、もしくは多様化し複雑化し続ける社会課題、地域課題に対して、様々な立場を行き来しながら事業創造をしているものです。

地域力創造 近藤:ご縁あった地域に、基本的には深い取り組みをさせていただくところ、表面的なアドバイザーとしてのコンサルティングのような関わりではないところに関しては、基本営業所事業所を設置して、地域の一員としてプレーヤーとして、汗をかく人間たちの集まりです。

あらゆる課題に向き合いながら、現地事業所を設置して地域一番のプレーヤーを目指していく。単純なアドバイスやコンサルティングにかかわらず、プレーヤーとして地域に深く入り込み、その中から得た流域を地域に還元していく形で、我々地域の暮らしをより良いものにしていきたいと思ってます。

地域力創造 近藤:交流人口、事業承継、空き家、ふるさと納税等々、様々事業展開をしているところですが、その結果、関係人口を作り、ふるさと納税が増税し、事業承継につながり空き家を解決していく、ふるさと納税の増税分を基金をいかにして地域の街づくりにつなげていくか、基本的には歳入と歳出のバランスですので、いかにして財源を確保し、地域課題解決に充てるかというところをすごく強く意識して取り組みをさせていただいてます。

地域力創造 近藤:地域商社事業も、先ほどの事業者さん、我々福祉事業者ではないんですけれども、岡谷市の創業140年の麹屋の経営再建を私やってまして、一年半で最高売上高、それから商品も開発しながら短期黒字まで回復させて事業を展開してます。

地域力創造 近藤:あくまですべてにおいての大事なところはキャッシュポイントが何なんだ、やはり行政負担だけに頼っているといつか財源って尽きるわけで、いかにして民業として財源を確保していくかというところが強い課題意識です。

我々「自走する稼ぐ力」ですとか、「地域協力隊究極100人取っていきましょうよ」みたいなご提案もしながら、人を地域に呼び込み、税収を増加させ、それを再投資していくということをお手伝いさせていただいてます。

地域力創造 近藤:アドバイザー延べ10自治体以上、それから活性化起業人の派遣であると、協力隊の受け入れ、インターシップの受け入れなんかも年間100名以上受け入れていて、今回千曲市さんとの取り組みに関しては、相談の入口は福祉課長橋立さんからの、B型事業所の課題解決であったんですが、オンラインミーティング後すぐさま現地視察させていただいて、他部署の方々も意見交換させていただく中で飛び火して、地域プレーヤーとの交流や相談なんかも生まれているところです。

地域力創造 近藤:長期的には、多様化し複雑化し続けるあらゆる地域課題を解決する総合チームの形成とか、きちんと歳入を増やし、しっかりと課題解決に当てられる財源確保と事業実行、地域プレイヤーが活き活きと活躍し、地域の暮らしをより良いものにしていくということを目指したいと思っています。

地域力創造 近藤:今回熱量とか、オンラインミーティングで確認させていただくこと、大体私覚悟を問うんですね。担当者さんが持たれている課題解決も提案するんですが、はみ出た提案もさせていただき、すぐさまに現地訪問させていただくと、その結果、令和7年度に向けてかなり大きな枠組みでの取り組みを進めていくことをお話ししています。

地域力創造 近藤:やはりチャレンジナガノ、皆さんがいらっしゃることによって、かなりハンズオン支援、Publinkさんのファシリテータがあることで、自治体さんの安心感が圧倒的に違うなということ思いました。それからきっと県庁のお墨付きがあることで、自治体の皆様が役所の中で稟議を通しやすいのかなと感じました。

Publink 栫井:地域力創造株式会社 コンタケ様、どうもありがとうございました。本当にパワフルな方でございます。ではそれを受けまして、やってみてどうだったか橋立さんお願いいたします。

千曲市コメント

千曲市 橋立:今回長野県の担当者、Publinkのご担当者様とも話している中で、テーマはどこの市町村も抱えるものであって、挑戦し甲斐はあるけど、解決は難易度が高いのかなという中で、やはり官民で知恵を出しあって、相乗効果を出しながら事業展開をしていければいいのかなということを感じました。

また書類選考含めて、応募いただいた企業様の取り組みを拝見させていただいて、行政もより多角的な視点から事業展開をして、人材・財政的なコストについても最大限無駄を省きながら、どこまで効果を出せるかということを考えていかなくてはいけないのかなと、改めて勉強になりました。

それと今回応募いただいた企業様を見ていく中で、募集する市町村に対する「カスタマイズ」されたご提案をいただきますと、市町村としても企業様の熱意をより感じますし、今後のイメージがしやすいと思いました。

また少し反省点としましては、行政が事業を実施する場合は、良くも悪くもリスクマネジメントに慎重にならざるを得ずに、また決済までの手間が多く、民間企業様の求めるスピードとシンクロして進めていくのが難しいことについて申し訳ないなと感じました。

千曲市 橋立:千曲市、あんずですとか、温泉、田毎の月等、観光に力を入れていますので、皆さんオンオフかかわらずお越しいただければと思います。

Publink 栫井:橋立様ありがとうございました。皆様、福祉の分野でこれだけ熱量ある方が推進されているのは素晴らしいです。我々千曲によく行きますが、本当に楽しい場所でございます。ぜひ行ってください。