霞が関で実際に行われた改革、その知見をシェアし表彰することで更なる改革を促進する目的で開催されたピッチイベント『第1回・意外と変われる霞が関大賞』。
改革派現役官僚有志団体「プロジェクトK」が主催し、審査員として河野太郎氏、WLB代表の小室淑恵氏、千正組代表で千正康裕氏(元厚労官僚)、オブザーバーとして人事院総裁の川本裕子氏などが参加。
その様子を詳細にお届けします。
人を助けようと思ったらまず自分自身が健康で安全でなければならない
プロジェクトK 4期副代表 栫井 誠一郎(以下、栫井氏):続いて、国土交通省におけるワークスタイル変革ということでよろしくお願い致します。
国土交通省 大臣官房 総務課 星野(以下、星野氏):皆さんこんにちは。国土交通省の大臣官房 総務課から参りました星野と申します。
星野氏:農水省の皆様と同じく私は国交省を背負ってきておりまして、かつ一人で飛び込んできてしまったので、非常に緊張しております。
今日は昨年度実施した取り組みの中で反響が大きかった珠玉の取り組みをご紹介いたします。まずは国交省の働き方改革の全容をお伝えいたします。国交省では政府の取り組み方針を受け独自の取り組み計画を策定しています。さらに本省では、目指すべき3つの組織像を掲げて、6つの分野に整理したロードマップを基に改革を進めております。
星野氏:国交省は自動車・航空・観光など扱う分野が幅広く、本省には三十弱もの部局があります。そのため(各部局で)風土も意識も異なり、一律で働き方改革を進めるのは困難です。
そこで国交省では省全体の改革サイクルを回すと同時に、各部局におけるサイクルも同時に回す仕組みにしているのがポイントです。今日は昨年度実施した「職場環境改革」のなかから2つの取り組みをご紹介します。
星野氏:まずは、コンサルによる伴走支援です。各局で作成している業務改善計画や職員アンケートの結果から、何から手をつけて良いかわからないなどサポートが必要だと思われる部局に対して外部コンサルを提供しました。
具体的には係長・補佐級にそれぞれ別々で業務改善の見直し、意見出しを行ってもらい、その後両者の意見すり合わせを行い、最終的な改善案を作成しました。成果としては客観的視点からアドバイスをもらったりファシリテーションしてもらうことで具体的なアクションまで明確にすることができました。
対象となった部局からは「近くにいながら、知らなかったお互いの本音を知ることができた」との声が聞かれました。この取り組みのポイントとしては2点、第三者を入れたことで自分たちが持っていなかった広い視点や視座が得られたこと、もう一つは利害関係がない人が関わったということで忌憚のない意見を出せたことです。
続いて、オフィス改革の支援です。各部局からオフィス改革改善案をコンペ形式で募集しました。そこで採択された部署へオフィス改革の費用支援を行いました。国交省内の職員アンケートで、85%の職員がオフィス環境は重要と回答しておりますが、満足度はなんと17%という低い結果でした。
星野氏:「オフィス環境はどうせ変わらない」という諦めの声もあり、まずはとにかく目に見える変化を目指しました。
心理学者のウィリアム・ジェームズが「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ」と言っているように意識を変えて行動を変えることも重要ですが、環境を変えて行動を変え、一気に意識を変える効果もこのプロジェクトでは期待しました。
採択にあたっては、複数課での横断的な連携も評価ポイントとしました。結果省内全体で13提案があり、そのうち2案を採択しました。
採択した部署からは単にオフィス環境が快適になっただけではなく、「上司にすぐに相談できるようになった」、「チーム内のコミュニケーションが増えた」、など業務上も良い影響も出ています。
この取り組みのポイントとしては3点、『オフィスを変えるという形から入って意識を変えたこと』、二つ目が『コンペ形式にしたことで省内での競争意識が芽生え働き方改革の機運が醸成されたこと』、最後が『コンペを通じて一緒に取り組んだ課との連携が強化され、風通しがよくなったこと』です。
昨年度、他にも大小40近くの働き方改革を行いました。職員アンケートでも取り組みが浸透していることは感じますが、まだ道半ばです。働き方改革は誰かがやってくれると思いがちですが、今日紹介した取り組みには一人の熱い想いで実現した例もあります。
今回(ピッチの)タイトルを「変えたい!」としたのは、働き方改革を推進している部署だけが変えたいと思うのではなく、それぞれの部局や職員一人一人が変えたいという強い気持ちを持つことが重要だと思い、このタイトルにしました。
私事ですが、私は13年ホテルで働いた後、ホテル業で働く人を幸せにしたいと思い、国家公務員に転職をしました。
国交省に入って感じたことは公務員は色々叩かれますが、国家公務員の皆様は本当に想像してた以上に一生懸命働いています。ですが、日々の膨大な業務に追われ、心も身体も疲弊していると感じました。
以前、救急救命士の資格を取った際に言われました。
「人を助けようと思ったらまず自分自身が健康で安全でなければならない」
今、働き方担当官になっていますが、その言葉は働き方にも当てはまるのではと思っております。
「国土交通行政を通じて社会を良くしていきたい」
きっと国交省で働く人はそのような志を持って入ってきたと思います。冒頭に示した働き方改革によって、国交省が目指す3つの組織像はまさに社会をよくすることにつながるものです。
自分たちの働き方を変えることはその先の国民生活の向上にも繋がります。変えたい、その想いで私たち自身でより良い国土交通省、よりよい社会の創造に繋げていきたいと思います。
栫井氏:一人で(本イベントに)飛び込んで頂き、本当にありがとうございました。では質疑応答3分間に入ります。いかがでしょうか。
自由民主党広報本部長 河野 太郎(以下、河野氏):オフィス改革の具体的な成果みたいなものはありますか。多分、17%の満足度って、どこ(の省)も似たような感じだろうと思うんですが、それを変えることによって具体的にこんな成果が出たっていうものがあるといいなと。
星野氏:今回2部署実施しましたが、そのうちの一つではアンケートをとって、実施前と実施後でどのぐらい成果が出てきたのか出しています。
結果、ただ単に「オフィス環境が良くなった、会議室が増えた」という結果もありましたが、上司の方とよりコミュニケーションがしやすくなったとか、何か問題が発生したときにすぐに報告しやすくなったりとか、オフィスを変えることで業務の改善につながっていることが見受けられました。
全体的にアンケート項目は30以上あったのですが、全部上がる結果となっています。
栫井氏:ありがとうございます。千正さんお願いします。
株式会社千正組代表取締役/元厚生労働省官僚 千正 康裕(以下、千正氏):今の河野さんの問題意識に近いですが、オフィス環境が変わって職員の人にとって良い効果があるのはその通りだと思うし、わかりやすいんですが、これを2部署以上にもっと広げていこうとすると予算取りをしなきゃいけない。
そのために国民の理解を求めていかなきゃいけない。
「なに、官僚がいいとこで働いてんだ」みたいなことを言う人がいるかもしれないことを考えると、省内のコミュニケーションがよくなった以外にも組織全体のパフォーマンスが上がるとか、世の中に対してプラスが出たかという意味での効果が見えると一気に変わるって期待しているんですけど、何か考えていることがあればお聞かせいただけますか。
星野氏:ありがとうございます。そうですね、今回のオフィス改革も予算要求したわけではなく、あるものをかき集めて実施していて、なかなか正面切って「オフィスを変えたい」って言って予算を通すことが難しいのが現状です。
やはり、最終的には国民の皆様に見える形での効果を示すことで、より働き方改革を推進できるのかなと思っているところでございます。
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長 小室 淑恵(以下、小室氏):「健康でなくては人を救えない」という点について、(取り組みが)健康などに効果が出てたら教えて下さい。
もう一つは仕事上、国会議員に言いたいことがあれば、聞いてもいいでしょうか。
星野氏:働き方改革に関して、省全体で毎年アンケートをとっているのですが、目に見える健康の形での改善が今のところはまだ見られてないので、引き続き検討していきたいと思います。
議員の皆様に対しては、国交省の働き方改革を私たち自身で盛り上げていきますので、引き続きご支援頂ければ幸いです。
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・記事協力:プロジェクトK
・編集・デザイン・ライティング:深山 周作