公務員だから出来る「レアな体験」とは|ファーストキャリアとしての公務員 #2

マイナビ✕人事院で「ファーストキャリアとしての公務員」にフォーカスし、元官僚、元自治体職員で起業家であるPublink代表 栫井氏Filament代表 角氏をゲストに(ファシリテーター:人事院 橋本氏)公務員の可能性と限界を語り尽くした。

その様子をレポートする。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、主催者の了承のもと、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。

ファーストキャリアとしての公務員

マイナビTV MC 大久保氏(以下、大久保):お二人のファーストキャリアは公務員でした。

というところで、ファーストキャリアとして公務員を選ばれたことによるご自身がこれまで感じる価値だったり、お話をお伺えればなと思います。

株式会社フィラメントCEO 角氏(以下、角):もう僕20年(公務員を)やったので、ファーストキャリアと言えるか分からないほど、自分にはちょっと長すぎる感じなんですけど。

でも、公務員をやっていなかったら、今のポジションは絶対に築けていないんですよね。

公務員のいいところはたくさんあるんですけど、いろんな立場に対する優しさがすごく身につくのかなと思います。

僕の場合、大阪市役所、、、要するに基礎自治体なんですよね。

基礎自治体なので、本当に生々しい住民との触れ合いとか、困っている人を本当に目にするんですよね。特に僕が長年いた福祉の業界だと、困っている人ばっかりなんですよ。困っている人の話しか聞かないです。

『世の中を動かす理屈』をつくる力の鍛え方

:例えば、障害者福祉をやっている時だと、本当に困っていらっしゃる全身性障害のある方がおられるんですね。

全身性障害のある方で、本当に重度になると、自分で痰を飲み込んだりできないんです。だから、痰の処理をするために誰かが介護をしないと、死んでしまうかもしれない。

そういう人たちがおられるので、介護のホームヘルパーさんを付けるための予算を付けてあげたい。でも、無い袖は振れない。そうしたお金がない場合に、どういう介護支給の仕方をするのか考えるのが僕の役目だった時期があるんですね。

でも、それって他の邪魔が入ると、絶対に考えられないので。夜中の23時ぐらいからずっと仕事をするんですよ。どのくらいの計算で(介護支給を)つけるか、というのをやるんです。夜中の2時や3時までずっとやるんですよ。

そういうことを日々やっていたりすると、相手の立場に立つ力。それって優しさでもあり、相手のことをリアルに想像する力でもあるんですね。

相手の立場をリアルに想像する力というのは、どんなスキルよりもめちゃくちゃ世の中で大事なスキルだと思います。そして、ポータブルスキル。どこに持っていっても通用する力だと思います。

これを最初に自分が身につけられたというのは、すごくよかったと思います。あと、もう1個言うと、さっきいろんな事柄からストーリーを抽出するという話をしました。

あれはいい面、悪い面両方あるんですけど、公務員の仕事のほとんどは理屈を付けることだったりするんですね。「ここにはこういう理由で箱物を作る」だったら、箱物を作る時の理由、理屈を付ける。

あるいは制度を作るんだったら、「こういう人たちのためにこういう制度がいるから、これをつくります」という理屈を付ける。その理論を作る。悪く言うと言い訳をするということかもしれないですし、誰かを説得するということかもしれないですけど。

そのためのストーリーをひねり出して、そしてちゃんと整った状態にするということをしなくてはいけないですね。これって、世の中を動かすための理屈の作り方なんですよね。会社でも同じですよね。

決裁を回す時になぜそれが必要なのかということを考えて、それに辻褄の合った答えとして、具体的な施策があるわけですね。そこを作っていくことをやっていると、当然ながらロジックをつくる力もすごく鍛えられるし、ロジックの材料を発見してくる力も鍛えられますね。

このあたりの力は自分がいま会社をやっていくにあたっても、「会社がいま何をやるのか」、例えばコロナで経済が止まった。僕らの会社も経済の中で止まって煽りを受けそうになったかもしれないけれども、そこに対して、「この状況になったんだったらこうしましょう」と考えることができるわけですよ。

飲食店だったら、Uber Eatsになるじゃないですか。でも、Uber Eatsのような便利なものがなかった時、どうするかというのが実際の経営には問われるわけです。その時に答えのないなかで自分の力で答えを出す。そんな人間にきっとなれると思いますよ、、、というのがファーストキャリアとしての公務員のいいところかなと思います。僕はそれですごく今、役立っている。

大久保:相手のニーズを掴むこともそうですし、寄り添い方が公務員ならではというか。

スタートがファーストキャリアが公務員だからこそ、寄り添い方もそうですけど、どこまで寄り添って、どこまでニーズを汲み取ってというところは、経験出来たということですね。

これまで角さんがご経験された課もまさにそうだったと思います。そして、それがまさに今、活きているという。 

人事院 橋本氏(以下、橋本氏):そうですね。

大久保:だから、活かそうと思ったから公務員になったわけではなくて、公務員になってやってきたことが、社会に出てこんなに役に立っている、というところですね。

:そうですね。(市役所には)ラクしようと思って入りました(笑)。

大学生の皆さんに言いたいのは、学生の頃の僕は、今これをご覧になっている皆さんよりはるかに意識の低い、どうしようもない学生だったと思いますよ。そういう人間でも一生懸命やっていたら成長するんですよ、ということはお伝えしておきたいですね。

大久保:確かに「自分なんて」と思っている学生は、特に今、就活直前ですごく不安になっている学生は多いと思います。本当に公務員もそうです。起業されている「お二人のお話は本当にためになります」とコメントも頂いています。

まさに公務員と民間の併願で悩んでいるというコメントがありますが、併願をしていただくかどうか悩むということですかね。 

橋本:まさに今、このタイミングですからね。明日から本当に本格化しますから。悩んでいらっしゃるんだと思います。

:併願できるんだったら、併願したらいいんじゃないですか。

橋本:併願していいですよ。最後まで悩めばいいと思いますし、最後は腹落ち。自分の中でどっちが納得できるかなので。そこは天秤にかける自分の中の重りって違うでしょうし。最後まで悩めばいいと思いますね。悩む素材を私たちは提供できますので。

:そうですね。ファーストキャリアとしての公務員は本当にお勧めですね。

セカンドキャリアで公務員になるより、ファーストキャリアの方がなりやすいですし。国の官僚になるんだったら、その後、民間企業にキャリア採用で移っていくことも全然できますので。

大久保:ありがとうございます。栫井さんはどうですか?ファーストキャリアとしての公務員。

公務員だからこその”レア”な体験

株式会社Publink代表 栫井氏(以下、栫井):公務員にならないと体験できないレアなことって、めちゃめちゃあるんですよね。

民間企業と比べて、就職のパイってそんなに大きくないと思うんです。でも、ここじゃないとできないことが実は死ぬほどある。

そのレアなところに飛び込みたいという人にとっては、すごく魅力になるんじゃないかなと思っています。特に思うのが、20〜30年前は「ひたすら営業して成功報酬で稼ぐのがカッコいい」、「金を儲けるのはいいよね」という価値観の人も多くいた気がするんですけど、最近の学生はあんまりそういうところがなくて。

社会にいいことをしたい学生は、すごく増えている気がするんです。

世界はどんどん変わって、企業だって(いままで通りのやり方、考え方では)もうやっていけなくなっているじゃないですか。環境をどうやっていくかも、もちろん、そうなんですけど。多分、100年後ぐらいになったら、ネジ一本取っても環境に優しいネジでないと誰も買わない時代になっているのではと思っていて。

社会にいいことをやりたいという若い人たちが増えているのは、時代の流れかなと思ってます。社会にいいことをやりたいと思うんだったら、公務員というのはまさにそれを本業としてやれる組織です。

採算を取れなくてもやっていけるので。そこのところは一回やってみたらいいんじゃない、というのは思います。社会性のある仕事に興味があるなら、公務員はお勧めですね。

あとは培われるスキルとしては、さっきのロジカルな話し方とか組織の通し方、それはもちろんあると思うんです。でも、私がお勧めする一番の理由は、情報や人が圧倒的に集まってくることですね。

公務員をやっていると、民間企業の取組事例や情報は、死ぬほどもう読み切れないぐらい勝手に集まってくる。情報がもう氾濫するぐらいですね。そのなかで色々なキーマンとどんどん会っていける。

そこのアセット、人や情報のネットワークが圧倒的に手に入ります。それを公務員として活かし続けてもいいし、いったんそこから民間に移って、違う活かし方をして、また戻ってきてもいいと思うので。そういった特異性がものすごくあるかなと思いますね。 

あとはさっきの「併願したっていいじゃない」という話もあったので、ちょっと参考に私の時の話で言うと。「経産省に入っていいかも」と自分の心が100%納得がいったのは、官庁訪問期間でしたね。

橋本:本当に直前ですね。

栫井:そうですね。もう内定のプロセスの中で、最後が一番しっくり来たんですよね。

試験勉強をしている時は、まだ本当にこれが第一志望なのかなと思いながら、「とりあえずやるだけやるか。選択肢は広く取れた方が幸せな可能性が高い」と思って、とりあえず試験を受けて。。。

とりあえず経産省は面白そうだったので、面接を受け始めたんですけど、本当に入って幸せかは、いまいち確信が持てないまま面接を受け続けていたんです。

だって、働いたことがないからわからない

大久保:わからないですよね。確かに。

栫井:それがふっと自分の中で腹落ちしたのは、面談というプロセスで10人も20人もたくさん面談する時に「会う人たちが面白いな。この人たちと一緒に仕事をするのはいずれにせよプラスに違いない」と思った瞬間があって、それが「経産省を目指していいんだ」と一番思った瞬間ですね。

なので、併願も積極的にしたらいいと思うし、たくさん受けた方がいいと思うんです。結局、人なんですよね。ベンチャーの経営者としても思うんですけど、事業モデルがイケてる、イケてないって、実はあまり関係なくて。

いい人でチームを組んだら、事業はピボットしようが、絶対最後はうまくいく。一緒に働く人として、「この人たちがいいかどうか、ワクワクするか」、一見で決めた方がいいです。

そのためには、いろんなところに面接やインターンに行きまくって、「この人たちと一緒にいる自分って想像つくか。ワクワクするか。成長するか。成長しそうか」、それを検証の意味合いも含めて、たくさん受けた方がいいと私は思います。

大久保:面談を受けるということもそうなんですけど、学生の皆さんは社会人というものがすごく上の人間だと思っている方が多いなと感じます。全く別のものだと思っているというか。

私はそれを国家公務員の方に対して、確かに抱いていました。でも、このWEB国家公務員セミナーを通じて、「公務員の方はこういう方なんだ」というのをだんだん知るようになったんです。

面談するとか、面接するとなると、自分が評価をされていると思うので、栫井さんのように、その人がどういう人なのかまで意識がなかなか行きづらい学生が多いのではないかなと思います。 

栫井:確かにそうですね。面談はどうしても緊張感があるので。

私は角さんの話がすごく、どんな省庁の話よりざっくばらんだったと思うんです。

そういう率直に話してくれる社会人の人たちと「お茶しましょう」とやるのが一番大事だと思うんですね。

なので、部活の先輩だったり、大学のOB・OG訪問だったり、その知り合いのさらに紹介だったりで、極力、向こうが忖度なく何でも話してくれる環境でひたすら聞くというのがすごく大事だと思います。

大久保:面談の中で栫井さんは「この人たちは面白い」とか「こういう人と一緒に働きたい」と思ったのは、どういうところで感じたんですか。 

栫井:まず、私が入った経産省というところは何も堅苦しくないんですよね。変な人ばっかで(笑)

例えば、私はこんな感じの鹿児島の遺伝子100%の濃い顔をしているわけなんですが、特に大学4年生の時なんて、テニサーでテニスばっかりしていたので、黒さが今の2.5倍ぐらい。

そうすると、1人目の面接官が個室に入ってきて「よろしくお願いします」と言った瞬間、私の顔を見て、「君、日サロ行ってきたの?」と(笑)

その人は今でも省庁で、エースとして活躍されている先輩なんですけど、「こんなノリでいいんだ、公務員」みたいな。経産省で会う人、会う人が全然枠にはまっていなかったんですよね。

それを面白いと思う人もいれば、つらいと思う人もいるかもしれないんですけど。僕は面白いなと思ったし、めちゃめちゃ皆、頭がよかったので。

私は、官僚を辞めた人たちのコミュニティもやっているので、色んな人の話を聞くんですけど、中央省庁を辞めて外資コンサルに転職した人の給料はもちろん上がっているんだけど、「周りの同僚の頭の良さでいうと、官僚の方がよかったです」ときっぱり言っていて。

マジかと思いましたし。それぐらい人材の質がすごくいいところ。

視野が狭くなっちゃうとよくないので、外の空気を常に吸いながらバランスを取った方がいいと思いますけど、揉まれる場所として凄くいいかなと思います。

大久保:学生の皆さんは人材って、どういうことなのか中々わかりにくいと思うんですけど、頭がいいと言うと「勉強ができる」みたいに捉えられやすい。

そこが、学生と社会人は大きく違うじゃないですか。だから、そこを学生の皆さんにお伝えするとなると、どういうふうにお伝えしたらいいですか。 

栫井:信じてもらえるかわからないですけど、強く言いたいのは、官僚と公務員って「世の中をよくしたい」と本気で思っている人が結構いるんですよ。それはメディアが全然放映しないので、クソな仕事をしている連中のイメージがあるかもしれないですけど。

今は改善されたと思うんですが、私も毎日午前まで働く職場も結構あったんです。何でそんな命を削りながらでも頑張れるのと言ったら、社会をよくしたいという気持ちがめちゃくちゃ強いんですよね。

だからこそ頑張っているという人がすごくいて。その人たちはすごく勉強しているし、人間力もあるし、行動力もある。そういった人たちは、一生、尊敬できる先輩になったりするんですよね。

というところで、ただ勉強するだけでなく、社会人なので社会に価値を出さないとよくないと思うんですけど、そのロールモデルになる人は結構います。ダメな人もいるので、そこはちゃんと切り分けながらやるところですけど。

橋本:確かに。

ダメな人・良い人のところで、角さんの「相手をリアルに考える」というのが、私はすごく重要だなと思ってるんですけど、一方で公務員の仕事はシステムがかっちりとできているので、乗っかりやすいところはあると思うんですね。

でも、乗っかった瞬間にダメな仕事になると思ってるんです。

角さんにぜひお伺いしたいのは、相手をリアルに考えるために意識されていたことって、あるんですか。

どうしても仕事をしていると、法律で決まっているから、「これをやれば最低ライン」というのはクリアできる。でも、相手をリアルに考え出すと、そこだと足りない部分が出てきたり、違うアプローチの方がより高い満足度を得られるかもしれない場面があったと思うんですが、どのように克服されていましたか。

相手のリアルを理解するための『本当に接する』ということ。

:相手のことを本当にリアルに感じられるかどうかは、本当に接しているかどうかだと思うんですよね。僕が障害福祉をやっていた時には、団体の方とじっくり話をしていたんですね。

大阪の障害者団体は日本一強いと言われているんですけど、そういう人たちと腹を割って話をするということですね。さっき栫井さんのお話のなかでも「制度の説明だけして」という上っ面で接する人の例があったじゃないですか。あれにならないようにするんですよ。

相手と対話をする時に壁をいかに作らないか。そして、相手をリスペクトできるかということですね。こっちが上になったような気持ちにならずに、フラットに接する。何ならこっちの方が下になるように接する。

そして、そうすることによって、相手が本音のことを言ってくれるわけですよ。その本音の中に、自分を浸すことによって、初めて相手の立場に立つことが見えてくるんじゃないかなと思います。

こういうことを無理やりにでもやるような職場だったんですね。だから、障害福祉のことをわかっていない当時、まだ若造だった僕が行った時に、まず一日、障害者の方の世話をするヘルパーの役をやりました。

団体の人に「この人について」と言われ、お世話をさせてもらって。一日、しかも仕事としてはできないので、休みを取ってやりました。公務員をやって身に付いたこと、スキルというよりは、コンピテンシー、行動の特性ですけど。グリット(GRIT)とも言いますよね、やり抜く意志。まず徹底的に寄り添う寄り添うためには相手との接し方、オープンでフラットでリスペクトしながら接する。そういうところからスタートした気がしますね。

大久保:公務員をお二人とも辞められても尚、これからも公務とは関わってお仕事をしていくような事業を起業されていらっしゃいます。お二人が思うこれからの公務だったり、公務員の皆さんに期待したいことをそれぞれぜひ伺いたいです。

 :公務員の置かれた状況って、どんどん厳しくなっていると思うんですよね。今日の話の中でも言いましたけど、使える予算というのがどんどんなくなっている。

使える予算がなくなっていくと、自分の頭で考えて施策を立案して実行していくということ。その機会が少なくなっていくということなんですよ。これにプラスして、もう1個、法律にも縛られているという話もしましたね。自治体に就職すると、令規集というのがあるんですよ。その令規集の中に事務分掌規則というのがあって部署ごとの役割・仕事内容が事細かに書いてあります。こういうことに縛られてしまうと、自分のやるべきことというのが、そこに書いてあることじゃないとできなくなってしまう。そういうことを「やらない言い訳」にするんですね。

僕が公務員にこれからなっていく人たちに対して期待したいのは、「そういうことを言い訳にしないでほしい」ということですね。自分の意志、自分の意識をもっと高く持って、だからこそ知恵を絞る必要があるんだと。

決まった答えなんかないんですよ

決まった答えがなくて、あるのは世の中をよくするために自分がいま何ができるかという問いだけなんですよね。その問いに殉ずる心を持ってほしいなということですね。

あと、頑張れば頑張るほどお金がもらえる世界ではないです。頑張っても経済的に見返りが得られるわけではないんですよね。

フィラメントの顧問になっていただいている早稲田大学のビジネススクールの入山先生が、「世界標準の経営理論」という本を出されています。その「世界標準の経営理論」の中で紹介されている職務特性理論という経営学の理論があるんですね。

職務特性理論の中では、外発的動機。つまり、地位とか、あるいは金銭的な見返り。そういったような外発的動機よりも、内発的動機、自分の中から湧き上がってくるような、腹落ちして「これをやるんだ」という仕事をやること自体が報酬なんだとされていて。

そういう内発的動機を持って仕事に臨むと、パフォーマンスが高くなるという話があるんですね。

ファーストキャリアとして公務員を選ぶ人。そういう人たちには、自分の報酬って何だろうということ。ここを考えてほしいですね。やりがいと言っちゃうと、つまらないですよ。

でも、自分がどんな報酬をもらうのか。そこはやりがいという言葉では括れないものがある。もうちょっと深いものがある気がします。それを一度、探してみてほしいな。そうやってとことん仕事にのめり込んでやってみないと絶対に見えてこないところでもあるんですね。

その結果、合わなかったらやりがい搾取だと感じるかもしれない。でも、フィットした時に「これは天職だな」と思うかもしれません

大久保:最初に(役所に)入った時には、決まったことをやって、同じ時間に帰れて、楽な仕事だと思っていて。。。学生時代の角さんと同じように思っている学生もすごく多いと思うんですよね。

でも、公務員って本質的には決まったことはなく、「そうじゃないんだよ」ということを学生の皆さんにもわかっていただきたいところですよね。

:そうですね。

僕がいた部署は極めて辛い所だったんですけど、どこもそんな楽ではない。「楽ですぐ帰れるよ」という話ではないですね。今だったら逆にブラックな職場があんまりなくなっているのかもしれないです。でも、なくなっていること自体はすごくいいことでも、のめり込むほどに仕事ができる機会がなくなってしまっているとしたら、自分の”生の燃焼”を感じたいという人にとってはちょっと物足りないかもしれないですね。

大久保:橋本さんは打ち合わせの時に「公務員はオフィスワークじゃないんだよ」とお話ししていたじゃないですか。決められたことを、書類があって、何かをまとめていくだけの固定化された仕事じゃないっていう。でも、学生さんはそういうふうに思いがちなところがありますかね。

橋本:そうでしょうね。

もちろん、オフィスワーク自体はそれはやらなければいけないことなので、確実にそれはやる。でも、そればっかりに注目しちゃうと、最初からテーマになっているタコツボになっていっちゃうと思うんですよね。

もちろん、最低限の仕事として要求されているものはちゃんとやりつつ、アウトプットを高めるために、働き方改革で削った時間を今度は自分の研鑽に当てて、いろんなコネクションを作ったり、勉強して、それをアウトプットにつなげられるようにしたり。

そういう努力まで削ってしまうと、出せること、できること自体もどんどん小さくなってきちゃうんじゃないかな。

そんな感じの印象をお話から受けましたね。 

:自分で考えてやっていくこと。自分で考えて仕事を組み立てていくこと。企画をしていくこと。

そうやって、「答えはここにあるんじゃないかな」と探して、行動して、形を作っていく。それが楽しいんですね。

橋本:そういった楽しさを仕事の中で見つけられるか。どんな場所でどういう時に自分が面白いと思えるのか。そういうポイントを見つけるのが、できるかどうか、というところですか。 

仕事を面白がれ!ということですね。

大久保:確かに。栫井さんはどうでしょうか。

栫井:「これからの公務」についてですよね。

大久保:これからの公務です。そして公務員への期待。

栫井:今ちょうど時代の変わり目なので、これからガンガン変わっていくと思うんです。

私も角さんのお話と一緒で、大事な人生のほとんど半分ぐらいを費やす仕事の機会を、規則に則って淡々とやって終わるというのは、非常に人生がもったいないかなと思っています。

公務員は、極めてレアで特殊な職場であるからこそ、さっきのニーズを汲み取る力などがあるとすごく活躍できるんですよね。

なので、新しい時代の中で令和時代の公務員像を、これからの皆さんにつくっていただくことによって、自分自身ものすごく成長するし、社会もよくなるといったことが、どんどんやれると思うし、やっていただきたいという想いがすごくあります。

さっきの内発的動機というのは、私もすごく賛成で。

例えば弊社の仕事で長野県庁さんと一緒に長野県内で手を挙げてくれた市町村さんと、課題を見える化して、企業とマッチングしてプロジェクトを進めるということを9プロジェクトぐらい進めているんです。

そこで市町村さんの説明を普通にやると、淡々とした役所の資料を淡々と説明しがちなので、心に響かないよねと。ベンチャーのショートピッチのプログラムの講師をやるような人を連れてきて、市町村の人たちに5分でスライドを20ページ、1スライド1メッセージで話す。

例えば、「40秒でここを話して」といったようなことを研修して、「イベント当日も熱意全開で話してください」という話をしたりとか。「どんな課題を企業に出しますか」という話を長野に行脚して行った時も、最初、彼らは一瞬苦笑するんですけど「あなたはなぜ地方公務員になったんですか」、「どんな想いなんですか」と引き出した上で、今回出したお題は「あなたが公務員になってやりたいと思ったこととどう重なるんですか」ということを聞く。

公務員は減点方式の組織なので、冒険すると「そこはリスクを侵す必要ないでしょう」と言う上司が大体いるんです。でも、むしろ、これからの時代は熱意全開で周りに響かせていくことによって、新しい形でのプロジェクトの進め方をどんどんやっていける加点方式の人が褒められる社会に、だんだん変わっていくと思うんですよ。

公務員のいいところ、悪いところって、あると思うんです。でも、悪いところにまだ染まっていない人たちで、新しい公務員の風を起こしていって、10年後、20年後には新しいことをやる。

今って「公務員ブラックだよね」という感じがあるんですけど、これからの社会性の大事な時代において、公務員を経験したことのない人というのは、そこはちょっと見えていない人。

(公務員を経験することで)新しいブランドは絶対に築いていけるので。ぜひ、新しい公務員像、9時-17時で寝てという公務員ではない、新しいかっこいい形を、これからの人たちにはつくっていってほしいし、ちょうど変わり目なので、それができる人は活躍すると思います。

大久保:「何か貢献したい」とか、「何か役に立ちたい」という思いって、公務員を志望している方だけでなく、民間を志望している方にも、そういう方がすごく多い。

公務員はそれがすごくできる。

それを知った上で『ファーストキャリアとしての公務員』という選択肢を(就活生は)選べる状況なんですよ。この就活直前に民間も経験されて、起業されているお二人にお話を聞いているので。

いまは「就活をやらなきゃいけない」とか、「勉強しなきゃいけない」になってるんですけど、皆さんには選択肢が広がっているんだよ、というのを知ってほしいなと。

今の時期は”今しかない”ので、つらいとは思うんですけど、これだけお話を聞いていて、皆さん、楽しそうじゃないですか。栫井さんもそうだし、角さんもそうだし、橋本さんもそうだし。本当に皆さん、楽しそうなんですよ。

「楽しく仕事をしろ」ということではなくて。こういう選択肢があるので、それを踏まえて皆さんがどう選択肢を選ぶかというお話なんですね。選択肢がないと思うのと、あるなかで選ぶのとでは全然……。 

橋本:違いますよね。

大久保:ですよね。

橋本:少なくともこれをご覧になっている方々は、まだ公務員という選択肢はあるし、民間と公務員という選択肢の中で悩むことができるんですね。

なので、最後、皆さんが納得して、仕事を選べればそれでいいんですよ。ただ、その時に選択肢として除外しないでほしいということなんです。ぜひ公務員の仕事で得られるものを(今回の話を踏まえて)考えていただけるとありがたいなと思っています。 

大久保:そうなんです。公務員の仕事、ちょっと見えにくいじゃないですか。

橋本:そう、わかりにくいんですよね。

大久保:わかりにくいですよね。角さんが楽な仕事だと思ったこともそうだと思います。ごめんなさいね、角さん。こんな話ばっかりで。

:いやいや、本当そうですよ。30年も前の話ですからね。

大久保:確かに。

でも、見えにくいところがあるなかで、こうやって皆さんに知っていただいて、こういう選択肢があるんだと思ってもらえたら嬉しいと思っています。ということで、ここからは残りのお時間、質問に答えていただきたいなと思いますので。

橋本:質問に答えていただきたいと思います。

大久保:ご質問を質問スペースの方にお寄せいただければと思います。よろしくお願いします。

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・記事協力:人事院
・ライティング:mizuki
・編集・デザイン:深山 周作