【つくば市】年間500頭以上捕獲しても止まらない、イノシシによる獣害対策|内閣府OIC2021 #5

複雑化、多様化する官公庁及び地方自治体が持つ「課題」。その課題を研究開発型のスタートアップ・中小企業の斬新なアイデアと繋げるのが『内閣府オープンイノベーションチャレンジ2021(略称:内閣府OIC2021)』だ。

その成果発表のためのDEMODAYが、2022年2月22日に行われた。これから日本を変えていくかもしれない行政✕スタートアップ・中小企業の取組を特集していく。

年間500頭以上捕獲しても止まらない、1000万超のイノシシによる獣害

つくば市スタートアップ推進室 永井氏(以下、永井):つくば市スタートアップ推進室の永井と申します。

永井:本日は弊市とパイフォトニクスさんが一緒に実施した『農地や民家への猪接近防止』の実証について発表させて頂きます。

まず、つくば市の概況をご説明させて頂きます。

つくば市、人口は約25万人と全国的には中規模な自治体で、特徴としては、官民合わせて研究機関150ありまして、人口の約10%は研究従事者という科学の街、研究学園都市としてご認知頂いている都市です。

永井:都内と主要空港から60分以内で到達できる研究学園都市である一方、筑波山の周辺には田園地帯が広がっているような自然豊かな都市でもあります。こういうところなので、日本各地の山間地域と同様、イノシシの被害が生じています。

永井:農業被害が中心なんですが、家屋に対しての生活被害も生じており、市で把握しているだけで1000万円以上の被害が生じています。

現状対策として猟友会の方に協力頂き、年間500頭以上の猪を捕獲しているんですが、この猟友会の方も高齢化が進んでおりまして、人手不足が深刻な問題となっております。

そのような現状に対して、ここに掲げているような新技術を募集致しました。

人と野生鳥獣が、共存するための鳥獣対策

パイフォトニクス株式会社 池田氏(以下、池田):(こちらも)当社の光を用いて、イノシシ対策というテーマでも応募させていただきました。

(すでに話している通り)鳥においては実績があったわけですが、獣に対しては未知数でして、実際につくば市さんの環境をお借りして実験を行ってきました。

 使用した装置は同様にホロライト・チェッカーという装置になっております。

池田:こちらは非常に遠方まで明るい光が届きます。人間の目に入っても、レーザー光ではありませんので問題ありませんが、非常に眩しい。

だから、獣も眩しすぎて見ていられず、効果があるだろうということで、今回応募しました。実際にはつくば市、当社、あと途中から中部電力パワーグリッド様にもIOTのところでご協力いただくという連携体として実施しております。

池田:ファーストステップとして、東筑波ユートピアという動物園に猪が多数いるということで、動物園の環境をお借りしました。やはり、野生のイノシシにいきなり人間が挑むとなると非常にリスクが高いので、動物園でやろうと。猪が50匹を超える一方、非常に人間に慣れているのに、近寄っても全く微動だにしないので光を照射しました。

まず、光を照射すると地面に当たった光を目で追うので、なんかしら光に反応してるというのが分かりました

池田:昼間は、動物園に「イノシシさんに当てていいですか?」と許可を頂いた上で照射したところ、微動だにせず、「これ全然効かないぞ」となって。夜になって照射しても、イノシシは全く反応しない。

「そんなわけない」と私も研究者魂に火がついてしまい、人に慣れた獣は反応しないんじゃないか、野生でしなくちゃいけない、と方針を変えました。

ただ、やはり猪はかなり大きく、突っ込んできたらひとたまりもないので、中部電力パワーグリッド様のIOTツールと当社の光を融合したプロトタイプを作りまして、遠隔から猪を検知するとメールが届くような形設置をしてきました。

池田:今回、つくば市に『ホロライト・ファイブライン』という5本のラインをスキャニングするような装置を新たに試作しまして、要するに「こっち来るな、こっち来るな」という光をイノシシに与えるものになっております。

池田:実際に実施した場所は、稲葉酒造さんというところのお庭をお借りしました。ここは筑波山の麓にありまして、山からイノシシが降りてくるということですが、まだ試せてはいない状態です。

池田:なので、まさしく今実験中でして、何とか早くイノシシさん出てきて欲しいなあというところです。

まだ実験進行中なので、具体的な成果はこれからですが、何かしら近日中に成果が出るように進めている次第でございます。実験を通じて感じた事ですが、今後の課題としまして、鹿島市のカモの実験も含め、ソーラー発電をバッテリーを組み合わせて、人手がかからないシステムを作っていこうという方向性でありましたり、光の種類をいろいろ変えるっていうところで、その動物特有の効果な光があるんじゃないということの検証を進めてまいります。

池田:当社は人と野生鳥獣が共存できる未来をキーワードに、地方自治体様のお困りごとと当社の光技術を融合していく次第でございます。

司会: ありがとうございました。こちらの発表を踏まえまして、審査員の方からコメントを頂けますでしょうか?

市民への理解呼び掛けも、自治体とのオープンイノベーションの肝

株式会社野村総合研究所アーバンイノベーションコンサルティング部グループマネージャー徳重氏(以下、徳重):こちらの取組の素晴らしいところは、仮説検証をしっかり回していることですよね。

「怖いから動物園行こう、動物園行った、微動だにしない、やっぱ人に慣れてる、じゃあ野生でいこう、でも怖い、じゃあ自動化しよう、中電パワーグリッドさんよろしく!」という。

徳重:素晴らしいです。すべてこの短期間の中で仮説検証が動いていることが素晴らしいですし、ここからも仮説検証を動かさなきゃいけないんですが、この仮説検証する中で、しっかりと自治体さんが仮説検証できるようにコミット頂いていたんですよね。

つくば市の何が素晴らしいって、先ほど稲葉酒造さんの実験の話がありましたけれども、その際に周辺のお宅にチラシをまかれたと聞いてます

つまり、『変な光が出るけれども、気にしないでね』という話ですね。これはあくまでも鳥獣被害のための実験である、イノシシ被害のための実験である、ということをフィールドの持ち主である自治体がしっかりと市民の方々の安心も醸成しながら行っている。

これがまさに自治体と、事業会社のオープンイノベーションの一つの形として、必要なTipsなんだろうなと思って拝見しておりました。

まだまだ実験はやらなきゃいけない要素がいっぱいあるかと思います頑張ってください。

司会: それでは、次に小中学校に配布するタブレットを活用したキャリア教育に関するコンテンツをテーマにした和光市と遭遇設計の取組についてでございます。

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(デザイン・編集:深山 周作)