【京都府】処理費用は、年間四千万円、「海岸漂着ゴミ」を減らし、再資源化する。|内閣府OIC2021 #2

複雑化、多様化する官公庁及び地方自治体が持つ「課題」。その課題を研究開発型のスタートアップ・中小企業の斬新なアイデアと繋げるのが『内閣府オープンイノベーションチャレンジ2021(略称:内閣府OIC2021)』だ。

その成果発表のためのDEMODAYが、2022年2月22日に行われた。これから日本を変えていくかもしれない行政✕スタートアップ・中小企業の取組を特集していく。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、主催者の了承のもと、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。

日本では避けて通れない、「海岸漂着ゴミ」という社会問題

株式会社ミツワ製作所 原田氏(以下、原田):ミツワ製作所の原田でございます。

それでは『オンサイト型過熱水蒸気式炭化装置を用いた海岸漂着物の減容化及び再資源化』をご説明致します。

冒頭、京都府様から課題をご説明いただきます。

京都府 中原氏(以下、中原):京都府の中原と申します。産業振興部門でスタートアップ連携による社会課題解決の取組支援を担当しております。

本件は、本府の抱える環境分野における課題をテーマとしております。

京都府は、日本海に面しておりますが、沿岸部の自治体は、海岸に流れ着くゴミを回収・処分しなければならないという負担を抱えています。

中原:しかも、その量は年々増加しております。

処分にあたって、(ゴミに含まれる)塩分により焼却時のダイオキシン発生が懸念されること、リサイクルするにも木材やプラスチック、金属などが混在しており、 分別が困難なことから、その大半を埋め立てているというのが現状です。

さらに、近年は府内の埋め立て地がいっぱいになってきており、府外へ搬出をしており、運搬コストも上がってきております

このような課題を解決するために、本府では埋め立て処理量の減少、可能であれば、燃料等への転換を図ることによる資源の循環化も共に叶える、新たな処理方法を求めております。

原田:そこで、鶴見製作所とミツワ製作所は、海岸漂着物を蒸し焼きにして、無害で減容化・エネルギー化できる装置を提案致しました。

原田:これが装置のフローです。

原田:海岸漂着物を投入し、熱分解室で蒸し焼きにし、乾溜ガスは燃やし、残渣は炭化物として出るという仕組みになっています。この装置は無酸素状態で熱分解することで、塩分付着物でもダイオキシン類の発生を抑制できます

また、この装置を使用し、脱水汚泥を用いた実証実験では投入前の3%に無害化・減容化できた実績がございます。

海岸漂着物炭化装置実用に向けて必要となる実証実験として処理能力に関する実証、運用方法に関する実証が必要となりますが、オープンイノベーションチャレンジでは赤いチェック項目が確認できました。

原田:一つ目は、処理能力に関する実証で現地調査した結果、大きさはバラバラで事前粉砕は必要であると確認でき、種類としては材木、プラスチック、漁網や漁具等があり、海外製では鉛が付着しているものもあり、事前に分別は必要ないですが、鉛等の汚染については今後の課題となることが分かりました。

原田:二つ目は、現行の処理スキームの確認で、まず法規制について、海岸漂着物は産業廃棄物なのか、一般廃棄物なのか、自治体様によって判断が大きく分かれることが判明しました。

原田:これにより、法規制が(自治体ごとに)変化しますので、横展開の方法を考えていかなければいけないことが分かりました。実証を行うための調査で、海岸漂着物の運搬、海岸漂着物の熱分解試験、 設備としての規制対象等について考え、整理致しました。

三つ目の運用方法に関する実証として、本装置は焼却設備なのか、熱分解設備なのかについて、焼却設備にあたり、かつ熱分解設備の基準もクリアしていることが分かりました。

原田:また、この装置で実証実験することを各自治体様の同意を得るために、あくまで試験研究であることを証明したり、運搬については実証自治体様や排出先自治体様、双方から同意してもらう必要があります。

これらをすべてクリアし、運搬及び実証が可能となりましたが、この作業になんと三カ月を要してしまいました。

今後の取組としてフィジビリティ・スタディ、オンサイト化開発、 実証事業化とステップはまだまだあります。

原田:ですが、以前に鳥羽市様で海岸漂着物の実証試験を行っており、ダイオキシン類の発生はありませんでした。

今後はエネルギー化できるかコスト低減できるかという実証が必要ですけれども、鶴見製作所とミツワ製作所が培った装置開発技術の強みを活かして課題解決に結びつけて参ります。

司会:ありがとうございました。いまの発表を踏まえ、審査委員の方からコメントを頂けますでしょうか。

既存法令の想定しないイノベーションにどう対応するか

株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門プリンシパル 東氏(以下、東):日本総研の東です。審査員、メンタリングを担当致しました。

 東:日本は、海洋国ですから、海外の漂着物の問題というのは年々課題が増えてきている。スペースデブリとよく似ていますね。

今回の技術の一つのポイントは、オンサイト(現場・現地)型でやって行くということです。

今まで海洋漂着物に対して、ゴミの分別をして、それを輸送して、それぞれ処理というサプライチェーンの中で処理はしてきたんですが、ゴミが増える。

今回の技術によって現場で処理が可能になるということで、法令調査まで深く入ってやってもらいました。

漂着物に対する既存の廃棄物処理の法律がありますが、オンサイトで出来るようになった時に、今の法令が想定してない環境基準、処理技術の適用があるんじゃないかということです。

その結果、自治体によって(法令)バラバラだと判明して「まず、制度から検証がいるだろう」となりました。

実際、どのようにルールを変えると現場も助かるのかを踏み込んで調査頂いて、それに対する、PoCを現在やっています。

今後こういう(法令も関わってくる)ヘビーな課題に関しては、(本プログラムは)内閣府で実施していますし、どういう法令、制度がいいのか、現場の京都府、基礎自治体もしくは皆さんと一緒になって、引き続き内閣に提案して頂ければと思います。

司会:ありがとうございました。それでは続きまして、産後うつの発症、重症化を防止するための産後うつ兆候探知技術をテーマにした京都府とメロディーインターナショナルと島津製作所の連名での取組についてです。

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(デザイン・編集:深山 周作)