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長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。
60者の企業から応募があった2021年度(チャレンジナガノ2021 DEMODAY特集はこちら)から引き続き盛況な本取り組みは、2022年度も51者から応募があり、新たに多くの官民共創プロジェクトが誕生しました。
2023年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2022 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。
中野市役所だけでは出来ない『ファンづくり』を共創する
中野市役所 農業振興課 傳田 氏(以下、中野市役所 傳田):中野市農業振興課の傳田と申します。どうぞよろしくお願いします。
中野市は、長野県の北部にあり、人口は約4.1万人、総面積は112.18平方kmです。東京から電車では約2時間、車では約3時間で中野市までお越しいただけます。
こちらは中野市の産業別就業者の割合と長野県、そして全国と比較したものになります。
中野市役所 傳田:右側のグラフの通り、中野市は第1次産業の割合が長野県、そして全国よりも多くなっており農業が盛んな地域となっております。
また、中野市は多くの文化人も輩出しており、童謡『シャボン玉』などを作曲した中山晋平、誰もが聞いたことのある唱歌『故郷』を作詞した高野辰之の出身地です。
中野市ではさくらんぼ、桃、ブドウ、リンゴなど様々な果物を生産しています。
また、果物だけではなく、キノコや花の生産も盛んで、中でも、エノキタケ、そしてシャクヤクについては生産量が全国一位となっております。
中野市は年間の降水量が全国よりも少なく昼夜の寒暖差が大きいことから、果樹栽培にはとても適した気候で、この気候により甘くて美味しい高品質の果樹を生産することができます。ちなみに中野市のブドウの生産量は、長野県内1位を誇っております。
また中野市では、他にはない特徴的な野菜としてぼたんこしょうという伝統野菜を栽培しています。唐辛子のような辛さとピーマンのような果肉と甘さを兼ね備えた伝統野菜で、標高の高い地域でしか辛く、大きくなりません。
中野市役所 傳田:次に中野市の課題ですが、まずは農業就業人口と農家数です。農家の約半数が70代以上となっております。また、農業就業人口と農家数を10年前と比較しますと、農業就業人口、農家数ともに大幅に減少しており、農家の高齢化と減少が課題となっております。
中野市役所 傳田:次に観光面での課題です。こちらは中野市の観光地延べ利用者数の推移になります。本市の観光地延べ利用者数は、新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、コロナ前の時点でも既に減少傾向となっています。
中野市役所 傳田:本市が企業の皆様にご提供できることは、レンタルオフィスやコワーキングスペースをご用意している他、市内の立地に当たっては、空き家を活用されますと、改修費用に対し、補助いたします。
そして事業内容によっては、中野市、JA、観光公社で組織している信州なかのFAN PROJECT実行委員会から複数年の財政支援も可能となっております。
中野市役所 傳田:次に今回おてつたびさんとXYZさんの2社を重点推進枠として選ばせていただきましたが、なぜ一緒に取り組みたいと思ったかと申しますと、両者のご提案が本市が求めている若年層をターゲットとしたファンづくりであったこと、そして農業における人手不足を解消するためのマッチングであったり、オンラインコミュニティ、NFTなど、行政だけではできない様々な取り組みをご提案いただいたこと。
そして何より担当である私が両者のご提案にワクワクしたので、おてつたびさんとXYZさんの2社を選ばせていただきました。
株式会社Publink 代表取締役社長 栫井 氏(以下、Publink 栫井):傳田様、ありがとうございます。では、続きましておてつたび様、宜しくお願いいたします。
お手伝いを通じて、人と地域がWinWinに繋がる『おてつたび』
株式会社おてつたび 水野 氏(以下、おてつたび 水野):皆さんこんにちは。私、株式会社おてつたびの水野といいます。普段は自治体さんだったり企業さんとの連携を担当させていただいております。
おてつたび 水野:今回ですね、中野さんとさせていただいた取り組みに加えて、今後どんな未来を描いていくかということについて、今年度の成果を発表できたらなと思っております。
簡単に目次なんですけれども、弊社について初めて知られる方もいらっしゃるかなと思いますので、簡単な自己紹介と今回の中野市さんとの取り組みについて解説をしていきたいと思います。
「おてつたびという名前、ちょっと変わってるよね」なんて言われるんですけれども、こちらの”お手伝い”と”旅”というものを組み合わせたものになってまして、特徴を4コマみたいな感じで画像を並べてみました。
おてつたび 水野:一番左上に弊社が何をやってるのかを表す画像として、人手不足に困る地域の農家さんだったり、旅館さんだったりと、「仕事をしながら旅がしたい」そういう若い方を繋げるサービスを提供しております。
右上が弊社の代表の永岡と言いまして、今期5年目になるんですけど一生懸命、一緒に頑張らさせていただいているところです。
左下は、(おてつたびユーザーの利用サンプルとして)この画像で取り上げている方の場合、現地に移動して、午後1~3時にお手伝いをして、それ以外の自由な時間にその地域の観光を行うといった感じです。
右下は、細かくは割愛するんですけれども、旅行される方(=お手伝いする方)は、受け入れて下さる方と雇用契約をしっかり結びますので、報酬の支払いを受けております。とその報酬を交通費とかの足しにできるということで地域の人手不足と旅行者さんの地域を楽しみたい想いというものをマッチングさせてるサービスになります。
おてつたび 水野:弊社が大事にしている想いというものがありまして、これは「誰かにとって特別な地域をたくさん作っていこう」ということでございます。
おてつたび 水野:ありがたいことに、申込者数や使ってくれる企業さんは、右肩上がりで伸びている状況にございます。
主に使ってくださってるところなんですが、メインの層は宿泊業で繁忙期の旅館さんだったり、あるいは農家さんだったり、最近だとお祭りとか催事の利用も増えていて一定期間に人が必要な仕事ということであれば、弊社対応できるかと思っております。
おてつたび 水野:弊社現地の労働力を解消しながら、地域のファンを創出することが強みとさせていただいてまして、今回滞在した地域に何回訪れたことがありますかということで(アンケートを取ると)、初めて訪れる方が80%、また来たい方が91%、これだけいらっしゃるという強みを持っております。
こうした強みを生かして、今回中野市さんのいただいてたお題についてどう連携していったかといいますとご紹介ありました通り、中野市さんはとても農業の魅力を持っておられるところでございます。
一方でそこの担い手の方が減少しているという課題がございまして、今回のチャレンジナガノでやりたいこととしては、農業の魅力を発信をして、関係人口を作り、新規就農者の獲得や観光客の増加に繋げようというところでございます。
今年度の成果は、具体的に課題が見えてきて、「じゃあ、何からやるんだと」いうことでPublinkさんのサポートのもと、短期的、長期的にできることを議論しました。
やっぱり、核となってくる現地の農家さんへのヒアリングを通して、「今後彼らとも一緒にやっていくんだ」という状況を整えていきました。
これはこれからの構想の1枚絵(下記画像)になりまして、おてつたびは、『地域を知らない都市圏の若者たちを連れてくる強み』がありますので中野市の魅力をまず知ってもらい、その後愛着を深めていただき、中野市さんを盛り上げる一員として、継続的に関わっていただきたいというような構想のもと、一緒に動いていけたらなと思っております。
おてつたび 水野:最後にチャレンジナガノを今回実施してみて、『農業の強さ』、それが観光に活かせそうだなということがしっかりわかったので、これから頑張っていきたいです。
当社の代表の言葉になりますが、Publinkさんが、うまく議論を推進していきながら、面白いアイディアだったり建設的な意見をくれたことで、良い取り組みができたかなと思います。
おてつたびからは以上です。
Publink 栫井:はい、ありがとうございました。おてつたびの皆様が、本当に若者を含めて多くのファンを増やしていただいて、『どんどん中野市が盛り上がる』、そんな予感を感じております。
では続きまして、XYZ様お願いいたします。
地域のコンテンツを通じて、市内外の人をコミュニティ化する『XYZ』の仕掛け
XYZ株式会社 Founder 山崎 氏(以下、XYZ 山崎):お世話になります、XYZの山崎です。よろしくお願いします。
弊社は、2020年に長野県松本市で設立したベンチャー企業で、今年度で3期目に入る企業でございます。主な実績として、松本市の『33GAKU(サザンガク)』というコワーキングスペースのソフト事業の委託業務を行っていて、主にコミュニティ運営の実績がございます。
XYZ 山崎:今年度は、例えば松本の移住イベントや地方ビジネスのイベントであったり、ちょっと変わり種系でいうとNFTの勉強会みたいな幅広いジャンルをリアルとオンライン含めてイベント企画を行っています。
『33GAKU(サザンガク)』自体、サテライトオフィスの入居者の方々も数多くいらっしゃいますので、入居企業さん含めて簡単なイベント、例えば、カフェタイムやランチタイムのイベントも開催しております。
松本市発のベンチャーということで、理念として『自分たちの地元は自分たちで面白くする』ことを掲げておりまして、主に以下の四つ『Products、Space、Community、Marketing』を軸に上手く回しながら事業をやらせていただいております。
XYZ 山崎:今年度は、中野市さんとマッチングいたしまして、中野市のファン作りを目的としまして、「オンラインとオフライン両方向でのいろいろな仕掛けというものを、来年度打ち出していきましょう」というご提案をさせていただいております。
XYZ 山崎:例えば、オンラインでは、NFTを使って特産品や中野市をPRするというのは、ちょっと面白いんじゃないかっていうお話ですとか、逆にオフラインの方はがっつりその中野市の資源である斑尾高原や文化公園を使ってキャンプとかサウナみたいなイベントをやっていけたらと考えておりまして、両方のイベントや企画を繋げるために中野市のVTuberの信州なかのちゃんをプロデュースしたり、Slackを使って中野市の市民の方々だけではなくて、県内外のファンの方々のコミュニケーションの場を創っていけたらいいと考えておりました。
XYZ 山崎:オンラインコミュニティとしてSlackを活用して、信州なかの魅力発信ラボみたいな感じでやっていけたらと思っていて、本当に中野に移住したい人であったり、農業に興味がある人、例えば「中野市に行くんだけども何か美味しいものないですか」とか、「ビュースポットないですかね」というライトな相談とかつぶやきみたいなことから、もっとコアなファンみたいなところまでガッツリ取り込んで、実際にアクションを起こす人をそこから生み出せたらと考えております。
そういった方々を取り込むことで、例えばリアルのイベントの開催を手伝っていただいたり、中野市の魅力を使ったコンテンツを一緒に作っていただくといった、どんどんライトなファン層からコアなファン層へ移行するといった流れができたらと考えてます。
もう一つは、アウトドアイベントを企画しておりまして、例えば斑尾高原がジャズのイベントで使われているため、キャンプの聖地みたいな感じでキャンプイベントを行ったり、今流行りのサウナというコンテンツを切り口にして中野市内のアウトドアイベントのを実施していけたらと考えております。
XYZ 山崎:来年度のスケジュール感としましては、4月からスピード感を持って実施できたらと思っておりまして、大体6月から10月にテスト運営、本格稼働を検討しております。
ぜひ、興味ある方は中野市に一度お越しください。
Publink 栫井:XYZ様、どうもありがとうございます。
では、その2社と今年度プロジェクトを行ってみてどうだったかを傳田様、一言お願いできますでしょうか?
ハンズオンを通じて、プロジェクト同士の相乗効果も
中野市役所 傳田:進めてみての感想ですが、私の普段の業務では、お会いすることができなかった企業の皆さんとの繋がりを持つことができました。
中野市役所 傳田:またおてつたびさん、XYZさんは、わざわざ本市までお越しくださり、本市の取り組みに対する熱意を凄く感じました。
そして、企業さんとの打ち合わせを通して、私個人としても新たな知識やアイディアをインプットすることができました。
ハンズオン支援のメリットとしましては、長野県さんやPublinkさんのおかげで企業さんとフラットな関係で打ち合わせをすることができ、進捗管理やファシリテーションをしていただいて、スムーズに打ち合わせを進めることができました。
中野市役所 傳田:実はおてつたびさん、XYZさんとは、最初はそれぞれ別々のプロジェクトとして検討していたんですけれども、長野県さんとPublinkさんからのご助言もあって、今後は3者で連携していくような座組も考えております。
それぞれの企業さんと相乗効果が生まれて、良い取り組みができるのではないかと、とても楽しみにしています。
そして最後に、長野県さんとPublinkさんの明るく優しい人柄のおかげで毎回楽しい打ち合わせになりました。チャレンジナガノを実施して本当によかったと思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
Publink 栫井:ありがとうございます。
想いがあれば、どんどん企業横断でチームが組成されていて、より高い熱量でプロジェクトが進んでいくため、聞いてる方々も、今後に向けての可能性もたくさん感じていただけたんじゃないかなと思っています。
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