広報戦略を再定義し、大町市の魅力ある地域資源を“ウェブ”でも“海外”でも訴求する|チャレンジナガノ2022 DEMODAY #4

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

60者の企業から応募があった2021年度(チャレンジナガノ2021 DEMODAY特集はこちら)から引き続き盛況な本取り組みは、2022年度も51者から応募があり、新たに多くの官民共創プロジェクトが誕生しました。

2023年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2022 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

大町市の魅力ある素材をどう活かすか?

大町市役所 産業立地戦略室 伊藤 氏(以下、大町市役所 伊藤):長野県大町市産業立地戦略室の伊藤と申します。よろしくお願いいたします。

それでは取り組みについて説明させていただきます。まず、まちのことについて紹介します。

当市は、長野県の北西部で、日本の屋根、北アルプスの麓に位置しておりまして、著名な白馬村、長野市に隣接する人口約2万6000人の地方の小都市でございます。

大町市役所 伊藤:北アルプスを源にする清冽な河川や仁科三湖など、清らかな水が豊富で、市内の水道水は全て湧水で賄われておりますし、まさに水が生まれるまちでございます。

この水との様々な関わりが、街の発展に大きく関係しておりまして、現在、ブランド化を目指して取り組んでおります。

このため、水を活用した企業の誘致に限らず、国際芸術祭の開催だとか移住定住の促進、そしてSDGs未来都市として貴重な水を後世に残すとともに、水のまちのブランド化、水を起点としたまちづくりを進める『みずのわプロジェクト』を展開しております。

大町市役所 伊藤:課題としましては、豊かな自然を活かした観光バリエーションや、その良さを外に伝える情報発信力が乏しいということが第1の課題となりました。

様々な魅力ある素材はあるのですが、それを活かした『今だけ』、『ここだけ』、『あなただけ』といった大町市ならではの特別感というものが不足しております。

大町市役所 伊藤:また、地域の雇用に繋がる企業活動と連携したコンテンツの開発や地域の活性化に繋がる滞在型観光の推進が、火急の課題となっています。

課題解決のため、幾つもの企業様から提案を受ける中、選ばせていただきました2社に共通する理由を示しております。(下記画像)

大町市役所 伊藤:まずは他の自治体と連携、連携した豊富な実績があったこと。具体的でわかりやすい、熱意ある提案がありました。あと、企業視点での地域の課題解決に対して期待感が持てたことがあります。

大町市の『水』の魅力を発信できる取り組みによるブランディングの強化の可能性を感じておりました。

次に各社の個別の理由としてまずはアンテナ株式会社様。地域の活性化と情報発信力の向上ということで自然豊かな当市の魅力について、ウェブ上の認知を広めていただくということで、市内業者を巻き込み、SEO対策などで市の魅力を発信いただけるという提案に共感をいたしました。

地域コンテンツの強化やネット上のPRに期待が持てましたしセミナー等を通じた地域の事業者との繋がりと発展、市内関係団体との連携によるビジネスチャンスの拡大に繋がるということもありました。

続いて、株式会社Japan Navi様です。海外へのアプローチという特別感がありました。海外へのアプローチという海外販路に着手している当市の方針にマッチした他の提案にない様々な取り組みに魅力を感じました。

インバウンド観光の強化やブランディング、輸出強化により、アジアでの新たなビジネスの展開、海外の大学と地元学校との交流を見据えた企業や協業アイディア、若者を巻き込んだSNSなどによる情報発信に期待が持てました。


株式会社Publink 代表取締役社長 栫井 氏(以下、Publink 栫井):ありがとうございます。では、次にアンテナさん、よろしくお願いいたします。

他の自治体と同じような土俵で戦わない、尖ったウェブ施策を仕掛けていく『アンテナ』

アンテナ株式会社 代表取締役 吉井 氏(以下、アンテナ 吉井):大町市さんの取り組みに対する当社のご提案の内容なんですが、(現在のウェブ施策は)『水をまちのブランドにする』ということで、『みずのわプロジェクト』というサイトがありまして、ここを中心に『水』をキーにして発信していく、そんな仕組みに組み立てました。

ただ、訴求の仕方が他の自治体と同じような土俵で争っていて、ネットの世界でちょっと埋もれやすいかなと感じました。もっと尖った魅力で刺していくようなプロモーション手法をとるべきだと思ってまして、個々人の趣味趣向に合うようなコンテンツ化をご提案をしておりました。

アンテナ 吉井:弊社のマーケティングの知識をうまく使っていければいいんではないかという点と地元の事業者さんが、ウェブをうまく活用できてないことが多いんじゃないかなと思ってまして、その事業者支援のご提案もさせていただいております。

事業者さんもいいものお持ちなのですけども、(ウェブを)戦略的に扱えてないことが非常にありまして、更新しているだけであったり、ホームページは作ったけどそのままみたいなことがあり、企業唯一のオウンドメディアであるホームページやSNSを上手く使えてないのは非常にもったいないと思って、その支援をしていくように考えました。

アンテナ 吉井:(取り組みを始めて)元々、みずのわプロジェクトを中心に考えていたんですが、そもそも大町市としての発信を再定義した方がいいんじゃないかという話になりました。

『水』という一点ではなく、市全体の情報発信の再定義みたいなところで、もう1回組み直していく。

並行して、市内事業者さんたちの発信力強化を進めていくような話になりました。

アンテナ 吉井:そのため、まずは行政としての情報発信の再定義をするにあたって、調査をしていこうと考えております。

そもそも、ちゃんと求めている人たちに届いているのか、逆に届けるためにはどうしたらいいのか。アクセス解析などの調査をもとに組み上げていこうと思っております。

そうした内容を基に市内事業者の発信力強化ということで3パターンのセミナーを開催しました。

アンテナ 吉井:ホームページやSNSの取り組みっていうのは、各社さんで内容も進み具合も違いますので、それに合わせて行うという形で、ホームページを持っているところ、これから作っていこうと考えているところなどに分けてセミナーを行っております。

来年度に向けてこのセミナーと事業者支援を併せて行っていくのと、今期に調査した内容を基に大町市としての情報発信の再定義を行っていければと考えております。

大町市さんの強みとして、3000m級の山が間近に迫るような景観はなかなか他にはないことだと思ってます。それとそれゆえの豊富な湧水とか、他の市町村さんには中々ないようなコンテンツをちゃんと伝えられれば非常に大きな力になると思います。

また、お打ち合わせに副市長さんが毎回参加されるなど、非常に強い想いも感じております。あと、セミナーを行ったら、3件の内、3件とも参加してくれる方が非常に多く、事業者さんたちの熱い想いも感じることができました。

チャレンジナガノは、他の公募のように仕様が決まってるわけではないので、最初は企業側とし取っつきにくいかもしれないですけども、普段語れないような夢を語っていって、その夢を一緒にぶつけ合って、行政の皆さんと一緒になって組んでいく…そこに長野県さん、Publinkさんの想いが伝わっていって、より良いものを作っていくみたいな流れができるんじゃないかなと思ってます。

弊社も一緒に頑張っていきたいと思ってます。

Publink 栫井:ありがとうございました。では、続きましてJapan Naviさん、お願いできますでしょうか?

地域の海外施策と担い手育成を掛け算していく『Japan Navi』

Japan Navi 渡邊 氏(以下、Japan Navi 渡邊):よろしくお願いいたします。まず、弊社Japan Naviグループと私の自己紹介から始めさせていただきます。

私、長野県伊那市出身でございまして、本日も地元伊那市からお繋ぎしております。

Japan Naviへの入社理由としては、県外への進学だったり、海外生活を通して、長野県は凄く魅力に溢れているものの、「もっと国内外の人に知ってほしいな」というところから、この会社に入社をいたしました。

弊社の事業内容は、『地方創生』、『教育の国際化』、『グローバル』、これを合言葉にしておりまして、シンガポール、それから日本両方の拠点を置いている会社になっております。弊社のミッション、ビジョンは、『人生を賭けて、日本の地方の発展に貢献したい』というものになっております。

Japan Navi 渡邊:このビジョンの基、まずは海外での知名度を上げるためにシンガポールで在住日本人向けメディアを運営しておりまして、今はありがたいことにシンガポール島内における日系メディアの中で市場シェアNo.1となっております。
あとは教育の国際化促進事業という部分においては、日本の中学校、高校で帰国子女の受け入れをされている学校だったり、大学、日本語学校で留学生が欲しい際のPRサポートをさせていただいておりまして、長野県では佐久長聖高等学校とご一緒させていただいております。

Japan Navi 渡邊:それでは、今日の本題になりますけれども、地方創生事業においては、これまで(地方創生のPRと言えば)トップセールスだったりインフルエンサーの招聘だったり、打ち上げ花火的なアプローチだったと思うんですが、それとは異なり、私たちは海外に拠点を置いているからこそできる継続的な取り組みを推進しております。

Japan Navi 渡邊:来年度取り組みを始めるところも含めて、スライド(下記画像)に映っている自治体とご一緒させていただいております。特に青森県むつ市様とのプロジェクトは、次年度で3年目を迎える大きなものになってきております。

Japan Navi 渡邊:こちらの取り組みは、輸出、地域ブランディング、観光インバウンドを三つの軸に、かつ地元の大学生とそれからシンガポールの国立大学生を一緒に巻き込んで進めるプロジェクトということで地域の担い手育成も兼ねたグローバルな取り組みとなってます。

Japan Navi 渡邊:去年は地元の学生さんにシンガポールに来ていただきまして、シンガポールでフェアも実施をして、かなり売り上げも出たような形になったり、インバウンドにおいては実際シンガポールのインフルエンサーの方を招待するようなツアーも実施できました。

こうした青森県でのプロジェクトを長野県でも横展開をさせていただけたらと思っております。

長野県立大学様との連携が決まりましたので、今後は弊社、シンガポール国立大学、この3者で協業予定になっております。その舞台を大町市様とさせていただきまして、同じような輸出、ブランディング、観光インバウンドを盛り上げていけたらと思ってます。

今年度以降、ホップ、ステップ、ジャンプということで中長期的にご一緒できたらと思っております。

大町市様の方では令和6年度に国際芸術祭がございますので、それも見据えて盛り上げていけるようなプロジェクトにしていきます。

Japan Navi 渡邊: チャレンジナガノにおいては、弊社も現地にお伺いして、計3回ほど打ち合わせを実施させていただきました。副市長様含めまして、皆様お忙しい中、打ち合わせを通して、今年(2023年)の夏以降にプロジェクトを本格始動ということで方向性が決まりました。

これがですね今年度の成果になります。

Japan Navi 渡邊: また、市役所内では横断的なプロジェクトチームも組成いただけるということですので、今後は大町市様の横断チームと、長野県立大学様、そして弊社の3者でプロジェクトを進めていく予定です。

それからPublink様には、プロジェクト期間通じて本当に親身にアドバイスいただきまして、お陰様で来年度のプロジェクト本格始動という方向性に至ったと思っております。それから長野県の産業労働部様にも同じように大変サポートをいただきました。大町市様とのプロジェクトが本格始動した後、弊社も県内拠点の設立を設立を検討しておりますので、その際はまたお世話になるかなと思っています。

Japan Navi 渡邊:今日聞いてくださってる方、非常に多いと聞いておりますので、ぜひ企業様、自治体様の中で、海外展開や国際化推進にご興味のある方やお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ私・渡邊までお気軽にお問い合わせいただきたいと思います。

Publink 栫井: 皆さん、素晴らしいプレゼンテーションありがとうございました。それでは、大町市さん、取り組みを通しての感想をお願いいたします。

民間目線の発想やアイディアにより大町市のモデルを作り上げていく

大町市役所 伊藤:それでは私の方から進めてみての感想ということで、各社について説明差し上げます。

まず、アンテナ株式会社様。市内の企業を巻き込んだ、市の情報発信力強化が一層進むと感じております。Webでは見せる仕組みが重要ということで、発信の仕方について考えることができました。また、今後市内の事業者も巻き込み、一緒に情報発信の強化に取り組んでいきたいと思っております。

続いて、株式会社Japan Navi様。こちらは、海外への販路の拡大と国際化の推進で、海外という特別感や広がりを感じております。インバウンドツアーの造成だとか、SNSの積極的活用に力を入れていきたいと思っております。また地域の学校や海外の学校との協働により、海外販路を開拓、また輸出強化を図り、地域の国際化を進めていけたらと思っております。

大町市役所 伊藤:最後に事業を進めてみてのメリットや気づきです。

まず、普段会えない企業との出会いがありました。発想の転換には、専門家の助言は有意義でしたし、チャレンジナガノをきっかけに一歩を踏み出したことが一番のメリットだったと思います。

次に民間目線での考察やアイディアの提供がございました。民間目線の発想やアイディアにより大町市のモデルを作り上げていく大きなアシストを受けたと思います。2社それぞれ違った観点の切り口であって、相乗効果による魅力アップに繋がることを期待しております。

大町市役所 伊藤:そして提案から具体的な課題と今後の目標が導き出せました。また、ハンズオン支援により、事業進捗が明確となって、各企業とのやり取りがスムーズに行えたと思っております。

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