ICT教育先進地 喬木村のさらなる進化を目指して|チャレンジナガノ2023 DEMODAY #4

長野県が主催(運営事務局:株式会社Publink)する、長野県内の市町村が抱える課題を、多様な企業とのオープンイノベーションによって解決する取り組み「おためし立地チャレンジナガノ(以下「チャレンジナガノ」)」。

2021年度に始まったこの取り組みは、3年目を迎えました。

1年目は60者、2年目は51者、3年目は61者と、引き続き、多くの企業からの応募を集めています。

2024年3月7日に開催された『チャレンジナガノ2023 DEMODAY』の様子をレポートしていきます。

※本記事は、原則全文書き起こしとなりますが、イベントや話者の意図が一層伝わるように、一部(事務連絡、言い淀み、繰り返しなど)編集を加えております。
※記事内の肩書などは、イベント当時のものとなります。

ICT教育先進地 喬木村のさらなる進化を目指して

 喬木村役場 企画財政課 宇野氏(以下、喬木村 宇野):喬木村役場財政企画課の宇野と申します。よろしくお願いします。

喬木村を簡単にご紹介させていただきますと、長野県の南部に位置しておりまして、人口が5900人、面積が66平方キロメートルということで、小規模な自治体になっております。

気温は今日で最高気温が12℃ぐらいなので、長野県の中では比較的温暖な地域と言われております。名物は記載の通りでありますが、今回応募のテーマにもありますが、教育子育ての関係でかねてから力を入れているような特徴がある地域です。

喬木村 宇野:これに関連しまして、保育園、小学校、中学校が村の中にあるんですが、半径約150メートルの中に一箇所に集積しているというところで、物理的に連携しやすい教育環境があるというのも一つ特徴であります。

またアクセス面なんですが、現状ですと東京までバスで約5時間、名古屋までも2時間ぐらいかかるようなところではあるんですが、今後2027年以降にリニアが開通した暁には、東京まで50分、名古屋まで30分ということで、劇的に交通の便が良くなるという可能性のある地域になっております。

喬木村 宇野:今回喬木村は、チャレンジナガノで「ICT教育先進地喬木村のさらなる進化を目指して」というテーマで募集をさせていただきました。

喬木村 宇野:喬木村は、国の施策(GIGAスクール構想)に先駆けまして、文科省の実証実験に参加したりですとか、タブレットの一人一台環境を実現、またICT支援員の配置も実現してきました。そういったことも認められまして、各大臣の評価、受賞を受けたことがあるんですけれども、時が経つにつれましてGIGAスクール構想によって機器整備率の優位性がなくなってきたというところで、村が特別すごいというところが今少し薄れてきているような点が課題でありました。また、このICT教育が村のPRに中々つながってないんではないかというような課題もございました。

喬木村 宇野:喬木村が企業様に提供できるヒト・モノ・コトということでPRさせていただいたんですけれども、まずヒトについては、職員や大学教授などICT教育の専門家が立ち会いから一緒に関われるということ。

喬木村 宇野:続いてモノに関しては、学校で実際に利用しているICT環境を研修・教育環境として提供できるということ。

喬木村 宇野:続いてコトとしまして、先進的にICT教育に取り組んでいる学校の生の現場を、研修・研究機関として提供することができる、主にこの三つをご提案しました。まとめますと、ICT教育を通して培ったノウハウや環境を提供できるということを強みとしてPRを行わせていただきました。

喬木村 宇野:このことを前提に、喬木村をフィールドにした新たな学びを作り出したい、そのことを通じて、村のPR、移住定住・関係人口の増加を目的にしているというような企業ピッチをさせていただきました。

喬木村 宇野:そのところ全部で14社の企業様からご提案をいただくことができました。その中で2社マッチングをさせていただいた企業というのがあるんですが、1社目が、東日本電信電話株式会社様になります。

喬木村 宇野:NTT東日本様になるんですけれども、提案いただいた内容は、都市圏の学生向け探求プログラムの開発ということで都市部の高校生が喬木村をフィールドに探求学習をするというふうな事業になります。

選定の理由としては、具体的な事業提案があったということと、喬木村は高校も大学もなく、従来行われていなかったような取り組みであったというところも選ばせていただいた理由になります。

また、従来からある教育環境や、伝統文化を生かすことができるというところ、またご担当の阿部様のご丁寧な対応というところも選ばせていただいた理由です。今後は、今想定している一校以外にも、また別の学校とも事業を広げていければと考えております。

喬木村 宇野:もう一社は、地域力創造株式会社様です。今回の応募テーマは、ICT教育ということで直接的な関係が低いんですけれども、先ほどお話もあったように、かなり行動力があるような方でありまして、何かが起こりそうな予感というのが喬木村の中で強くあり、またそれに伴って実施する事業も、国の財政支援があるような事業スキームであったというところで選ばせていただきました。以上になります。

Publink 栫井:喬木村様どうもありがとうございました。それでは実際の企業さんの取り組みを聞いてみたいと思います。二回目の登場になりますが、地域力創造株式会社のコンタケ様、よろしくお願いいたします。

地域力創造株式会社:特別交付税制度を組み合わせた外部人材導入

地域力創造株式会社 近藤威志 氏(以下、地域力創造 近藤):地域力創造株式会社 コンタケ、二度目の登場になります。

今回、喬木村さんとの事業に取り組むにあたって、特別交付税を組み合わせた外部人材の導入のご提案、それから村のグランドデザインを描きながら、将来的な地域課題解決を行うような地域課題解決ソーシャルベンチャーの創出を目指すということであるとか、積極的に都市部の人材を呼び込んで、移住定住・関係人口創出を行いながら、空き家等の活用を進めたりとか、地域内事業者さんのご支援を行い、地域の担い手不足の解決や稼げる事業を創出していきませんかという話、もう一つは2027年にリニアモーターカーが出来上がることに向けて、喬木村さんが積極的に進められているハードの整備や、場作りみたいなことをグランドデザインと共に取り組みをさせていただけないでしょうかという話から始まりました。

長期的には先ほどの千曲市さんと同様なんですけども、いかにして地域で自走する事業を作り、稼ぎながら、その財源を地域課題解決に再投資していくようなソーシャルベンチャーを作っていくのかという話であるとか、まだまだふるさと納税をはじめとした歳入を増やすための手立てはあると思ってますので、例えば先ほどの福祉事業者さんもそうですし、私共の取り組んでいる6次産業化、製造業者さんの最終製品化、このあたり先ほど千曲市さんの方で、私どもでない会社さんが取り組まれていた中で、ワークショップを実施しながら、事業者さんがなかなか実施していけないみたいなことがあるときに、商品開発から生産管理、在庫リスクコントロール、卸売り小売りまでを一気通貫で担ってあげないと、なかなかやっぱり一次産業者さんに六次産業化予算をつけただけでは、サンプルが出来上がって終わるみたいなことがあるので、これをきちんと売るっていうことで、キャッシュポイントを作っていくっていうところ、それからこれも繰り返しになりますけれども、私ども全国での取り組み一貫して、いかにして多種多様な人間が生き生きと活躍して地域の暮らしをよりよいものにしていくのかというところ、そのためだけに事業実施しています。

地域力創造 近藤:解決策ですけども、実際私が総合プロデューサーになりながら、マネジメント人材なんかも送り込みながら、地域おこし協力隊を複数名登用していきます。

これはアドバイザーにしても、地域活性化、企業人、地域プロジェクトマネージャー、それから地域おこし協力隊にしても、自治体さんがやりがちなのは、一つの課題に一人を募集して孤軍奮闘させるという形ですね。これではどれだけ周りからスーパーマンのように思われている私でも、人として欠落しているところがたくさんあるわけですよ。人間誰しもオールマイティーじゃないんで、孤独奮闘させずにチームで戦うと、得意不得意と役割分担とパートナーシップを持って乗り込んでいって、チームで戦っていくっていうこと。

地域力創造 近藤:それから地域おこし協力も、自治体さんが非常に課題に感じられてると思うんですけれども、地域おこし協力隊の採用から人材育成から自走までを一気通貫でやっていかないと、採用の委託だけどこかのサイトにお願いするとか、育成を誰か講師に講演してもらって座学をするとかやっても、三年の任期終了後に食い口がある形で卒業卒隊して自走するみたいなことには、なかなかなってかないんですね。ここを我々は一気通貫で解決しています。

例えばなんですけども、採用では地域おこし協力隊って一般的に自治体さんが募集すると、一人か二人か三人来てくればいいところみたいなところがよくあるじゃないですか。我々一人の枠に対して百名以上の応募があったりするわけですよね。これは企業のリクルーティングの文脈と自治体さんの文脈が全然違うということを表していること、それから育成の部分も1on1を通じたメンタリング、ポジティブで自発的に行動する人を育てていくということをしてます。

地域力創造 近藤:今回、先ほどのICT教育であったはずなんですけども、私どもの会社概要を見た副町長がきっかけで、総合的な取り組みにしていきませんかと、こちらも明日からまた二度目の訪問をしますけども、現地で早々にもう空き家を掘り起こして、なんとか我々の拠点も4月から事業所を設置しようと思ってます。

国費を使いながら即日予算化を進めてくださっていたっていうことと、4月から当初予算でアドバイザーと地域おこし協力隊として我々のメンバーが村の取り組みに進めていく予定です。

地域力創造 近藤:こちらも先ほどの本当にアンテナが非常に高いなということであったりとか、ファシリテーターの方の安心感があったというところですね。

地域力創造 近藤:目指したいところはこんなところで、また機会がありましたらお話しさせていただければと思います。ありがとうございました。

Publink 栫井:コンタケさんどうもありがとうございました。本当にビジョナリーで行動力のある方でございます。続きまして、2社目でNTT東日本様よろしくお願いいたします。

東日本電信電話株式会社:地域資源/地域課題を題材とした都市圏の学生向けの探求プログラム開発アクティブな関係人口に向けたワデュケーションプログラム開発

東日本電信電話株式会社 阿部 氏(以下、NTT東日本 阿部):NTT東日本 地域ミライ研究所の阿部と申します。よろしくお願いいたします。私ども「地域資源/地域課題を題材とした都市圏の学生向けの探求プログラム開発」というテーマで今回進めさせていただきました。

NTT東日本 阿部:まずNTT東日本について簡単にお話しさせていただきます。NTT東日本は、東日本エリア17都道府県で、電話やインターネット接続サービスを提供している、日本の通信インフラを支えている会社でございます。現在、一通信事業者の領域から脱却して、地域の新たな価値創造企業への変革を進めております。「持続的な地域の発展を支えるソーシャルイノベーションパートナー」というスローガンで、現在改革に取り組んでおります。

NTT東日本 阿部:その改革を進める組織といたしまして、昨年設置されたのが、私が所属している「地域循環型ミライ研究所」という組織になります。設立の背景は、これまで通信事業者としては関わりの薄かった領域、地域の暮らしに深く根付いている文化・食・自然といった地域資源に着目して、それに携わる地域の方々、自治体やNPO、教育機関の方々との連携を深めながら、NTTとしてこれまで培ってきた技術力、組織力をベースに、ヒト・モノ・カネ・データ等の地域内外循環を創っていこうというものです。

NTT東日本 阿部:設立してまだ一年なんですけども、今現在、力を入れているテーマが、地域資源にICT技術を掛け合わせて、都市部と地域間の新しい人の流れを創出していこうという取り組みになります。

こちらは総務省の資料からの抜粋なんですけども、自治体に移住される定住人口でも、単に観光で訪れる交流人口でもない、関係人口というワードが昨今注目されています。その関係人口の中でも、その地域に何のルーツも持たない方が、何らかの熱い思いを持って、頻繁にその地域を訪れるアクティブな関係人口をいかに創出していくのかというところが、私どもの主要な研究テーマになっています。

NTT東日本 阿部:アクティブな関係人口の創出に向けて、今現在弊社が事業化を検討しているのが、探求学習を介して、都市部の学生と地方のマッチングをする事業になります。

都市圏の主に高校生をターゲットに地域社会とリアルにつながった探求的な学びの場を提供することで、学習を通じた地域理解、地域愛の醸成を図って、将来的な関係人口化を図れないかという取り組みです。

地域資産のみではなくて、人口減少とか文化継承といった地域課題も、探求の一テーマとしてコンテンツ化して、その地域への教育旅行を誘致するといった取り組みです。現在この取り組みを、弊社と連携協定を結んでいる東京都内の私立学校と連携して進めているんですけれども、すでに昨年7月に東北のとある自治体をフィールドとして、「地域課題探求ラボ」と称して一回目の実施しております。

NTT東日本 阿部:今回チャレンジナガノを介して、喬木村様とご縁をいただきました。前述のその私立学校と調整して、令和六年度の地域課題解決ラボを、喬木村をフィールドとして実施することが内定しています。

具体的には、高校1.2年生を対象に、4月5月で喬木村の地域資源や、地域課題を座学ベースで学んでもらい、6月に三日間ほど現地フィールドワークという形で実際に訪問して、現地の方々と交流の機会を設けた上で、各々が関心を持ったテーマを深掘りして発表してもらうという構成で考えています。

都会の高校生の視点で、地方の高齢化とか、伝統工芸品の技術継承の問題、また喬木村であれば、リニア開通に伴う環境変容といったところを考えてもらうという取り組みになります。

NTT東日本 阿部:私どもミライ研究所といたしましては、この探求学習の取り組みを通じて、参加した学生が学習を通じて、喬木村に対しての地域愛がどのように育まれるのかとか、地域住民の方々も学生を受け入れることで、シビックプライドみたいなものが醸成できないかといったところを、別途アンケート調査等を実施いたしまして、報告書という形でまとめていきたいなと思っています。

またこの取り組みを別の学校への横展開も検討しておりますので、引き続き喬木村としての受け入れ体制の拡充みたいなところにも協力していきたいなと考えています。

最後になりますけれども、チャレンジナガノに参加させていただきまして、Publink様、県の担当者の方の多大なご支援をいただきました。おかげさまで非常に短い間ではあったんですけれども、スムーズに検討の方を進めることができてるんじゃないかなと感じております。今回は本当に貴重な機会をいただきましてありがとうございます。

Publink 栫井:どうもありがとうございます。では2社様と取り組みをしてみてどうだったか、また喬木村さんにマイクをお戻しいたします。

喬木村コメント

喬木村 財政企画課 宇野:まず最初にハンズオン支援のメリットや気づきをお話しします。

喬木村 宇野:進捗管理や議論のまとめ役になってくださるファシリテーターの方がいらっしゃったところが、大きなメリットなのかなと感じておりまして、行政側の個人の能力にもよるところかと思いますが、今回の場合は、外部の企業様と事業を作り上げる経験があまりなかったので、議論の要点や整理を手伝っていただきまして大変助かりました。

また様々な提案や長期的な目線についても、我々にあまりなかったようなところでもあるので、そういったところでも補足いただいて、初めてのことでもスムーズに進めることができたと感じております。事務局の方は大変かもしれませんが、私たちのようなあまり慣れていないような小規模自治体の方のほうが、このハンズオン支援のメリットが大きいのではないかなと経験して感じたところであります。

喬木村 宇野:次に進めてみての感想ですけども、一つは県の事業であったところが大きかったかなと思います。私どもの喬木村単体では14企業様の提案をいただくことはできなかったと思っております。

実際に直接的にマッチングいただいた二社の方には、事業を進める中で、地域内の別の事業者様や、それ以外の企業ともマッチングすることができておりますので、広くつながりができてよかったと感じております。

最後に、全体を通しての所感ですが、小さな地域で「自分たちのことは自分たちでする」という考えが根強いところがありました。ただ一方、今後人口減少が続く中で、自分たちの力だけで十分な行政サービスを提供することは難しいのかなと思いますので、外部人材とか企業様の得意とする分野は、ともに事業展開した方が地域課題解決につながるということも多いのかと考えております。今後、時代にあった村づくりをしていく上で、今回のチャレンジナガノに参加したことが、官民連携を進める上で良いきっかけになったのかなと感じております。以上です。

Publink 栫井:皆様どうもありがとうございました。ワクワクとドキドキ最高でございます。