「日本の活性化のカギは、リーダーの育成にある」――。だが、リーダーとは、リーダーシップとはなんだろうか。
政治家や政党向けの政策形成や地方創生に携わりながら、リーダー育成を行う青山社中 朝比奈さんと、イノベーターとパブリックセクターを能動的に繋げるkipples 日比谷さんに「社会を動かし、社会課題を解決する」ためのリーダーシップの必要性についてそれぞれの立場で尋ねてみた。
[本記事は青山社中とのタイアップ記事です。一部PRを含みます]
なぜ、いまリーダーシップが求められるのか?
――朝比奈さんは「社会を動かし、社会課題を解決する」ためのパブリック人材育成事業として「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」を行っておられます。「リーダーシップ」を推し出してるのはなぜなのでしょうか。
青山社中 朝比奈さん(以下、朝比奈):まず、私の感じる日本の公共政策大学院(※1)とハーバード・ケネディスクール(※2)の違いについて触れましょうか。
※1.公共政策の立案に関わることのできる高度専門職業人育成を専門とした大学院。
※2.ハーバード大学の公共政策大学院(略称HKS)。公共政策・国際開発分野における世界最高のスクールの一つ。
いま、日本の公共政策大学院は冬の時代です。私自身、以前中央大学の公共政策大学院で客員教授をしていたのですが、廃止になってしまったんですね。他にも立命館や早稲田などドンドンそのままの形ではなくなっています。
色々理由はあるでしょう。
ただ、言葉を選ばずに言えば「面白くない」のが根本的な原因ではないでしょうか。
比べて、ハーバードは人が集まっている。
ただ、私もハーバードに通っていたので分かるのですが、安全保障や社会保障など各教科のテクニカルなところは大きく違いがありません。
では、なにが違うか。
ハーバードでの看板科目のひとつがリーダーシップ論であり、ここに大きな違いがあるのではと考えました。
リーダーシップとは、ハーバード流に言えば「変革するチカラ」です。それを学ぶために世界中から人が集まってきているのです。
一方で、日本では「行政手続法は●●で~」といった「こうなっている、こうしてきた」という過去か現状を教えるものばかりが目立っていました。
――維持するために学ぶのか、将来をつくるために学ぶのか。大きな違いですね。
朝比奈:それで上手くいっていれば問題はありませんが、いまの日本の状況を戦場に例えるならば、財政・産学・地域活性・少子化…など、殆どの戦線で負けている状態です。
この中で、変革しないでどうするのでしょうか。
私は変革を生むリーダーシップを、日本にインストールすることが重要だと考えています。
kipples 日比谷さん(以下、日比谷):私も実際に朝比奈さんの実施している「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」を受けたことがあり、そこで行政制度や財政、社会保障などの基本について学びました。
ただ、大前提としてリーダーシップの概念に触れ、その上で各分野の知識を学ぶことで、「そのスキルをもってして何を変革するのか」という本質的な学びとして定着する実感はありましたね。
リーダー≠指導する者
朝比奈:一般的にリーダーは略語では「指導者」です。上に立ち、他者を導くイメージが強い。
ただ、私はリーダーとは「始動者」と考えています。
「始動」する者、つまり自分で考えて動いて、「何かを始める者」であることが、本当の意味でのリーダーなのだと。
そして、そういったリーダーを目指すうえで、偉人の伝記や生き様を学ぶことが役に立つと思っています。
日比谷:私が受講した際は、スティーブ・ジョブズや盛田昭夫などを学びましたね。
世の中の成り立ちを自分ごととして咀嚼するために、過去の偉人を通じて学ぶというのは大事ですね。
朝比奈:今年は流行に乗るわけではないですが、渋沢栄一を題材に取り上げる予定です(笑)
渋沢栄一は500以上の起業に関わっており、官僚時代も含め、銀行制度や公債制度などの資本主義のインフラを築きました。
また、先ほど話に出たスティーブ・ジョブズも、ソニーの盛田昭夫に大きな影響を受けたと言われています。日本にはそうした世界が注目するリーダーがいたんです。
日本がそうしたリーダーを生んでいた時代、変革をしていた時代がありました。
ジョブズがソニーに学んでいる中で日本人は自国のリーダーから学べていたのでしょうか。
繰り返しになりますが、得たスキルを用いて何を為すかがリーダーシップの原点だと思います。
その「何を為すか」という自分の人生のビジョンを見つめ直すために、過去のリーダーたちの生き様を学ぶことを勧めています。
日比谷:「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」でも、その領域のプロフェッショナルの方に学べるので、いわゆる「お勉強」だけでなく、どういったスタンスでその分野に臨んでいるのか、現実のケースにおいてどのような判断をしたのかなど、生々しい話を伺うことが出来るのは大きかったな、と感じます。
朝比奈:そうですね。我々も意識的に変革マインドとリーダーシップを持った方々に講師をお願いをしているので、それを感じ取っていただけるのは嬉しいですね。
これからどうリーダーシップを学ぶか?
日比谷:ちょっと気になっているのですが、朝比奈さんとしてはどういった方に向けて「リーダーシップ」を学んで欲しいと考えているのでしょうか。
朝比奈:そこで行くとあまねく全員ですね。日本人はマネジメントは割と得意ですが、リーダーシップは欠けています。
敢えて言うのであれば「もっと国や社会のことを変革していきたい人」、「パブリックセクターのキャリアに興味がある人」、「パブリックセクターにいながらもっと変革をもたらしたい人」「ビジネスセクターにいながらもパブリックを意識して視野を広くしていきたい人」に向いていると思います。
ビジネスセクターの方はもちろん、中央省庁や地方自治体などの公務員、議員など様々な方が受講してくれています。
日比谷:確かに。
私が所属するPublic Meets Innovation(※3|以下、PMI)などの活動を通して出会う官僚も日々の仕事に追われ、担当以外のことも知りたいが学ぶ機会が限られているという方も多いので、ニーズがありそうですね。
※3.パブリックセクターとイノベータを繋ぐコミュニティを運営する一般社団法人。詳細はこちら。
朝比奈:ちなみに日比谷さんはなぜ「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」を受講されたのですか。
日比谷:私は、元々学生時代からスタートアップの業界に関わっています。また、この数年は、スタートアップが事業を推進するにはパブリックセクターを意識した活動が欠かせないという問題意識から、先ほど述べたPMIや渋谷をつなげる30人(※4)などの活動をしています。
※4.渋谷区の企業・行政・NPO市民の30名が参加し、連携して「つながり」を深めながら、課題達成のためのビジネス活動を約半年かけて立案・実行する、まちづくりプロジェクトです。詳細はこちら。
その中で、例えばスタートアップがシェアエコやFintechなどの領域で、新しい社会インフラの構築に挑戦するときに、行政や業界団体などとの付き合い方につまづくケースを目の当たりにしてきました。
そのようなスタートアップをサポートする上で、行き当たりばったりの対処療法ではなく、本質的に支援するためにもまずはきちんと学びたいと思ったのです。そんな中で「働きながら通える。だけど、ちゃんと学べる場所」として「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」がフィットして受講することに決めました。
社会を変革する機運の高まり
朝比奈:日比谷さんのされているPMIも面白い活動ですよね。「PublicとInnovationが出会う」というのは、非常に重要な話です。
日比谷:スタートアップは「官との接点」を、パブリックセクターは「イノベーターとの接点」を求めている。お互いに裏返しの課題を持っているんです。
だから、これを併せて解決できる場を作れたらと思って活動しています。
朝比奈:根源的に官僚など、パブリックセクターに居る人の多くは「社会をより良くしたい」というイノベーターマインドを持っているんですよね。
だから、相性もよいと感じます。
また最初に挙げた渋沢栄一などもそうですが、過去を遡れば「PublicとInnovationが出会う」ということは元々あったものでもあります。
日比谷:最近、そうした機運は高まってきていると感じるんですよね。
例えばPMIでは、リーガルコミュニティという弁護士を中心としたコミュニティがあるのですが、いまかなり盛り上がってきています。
日比谷:そこに参加する方々の話を聞くと、いままで弁護士の花形は知財、海外M&Aなどだったが、新産業のルールメイキングに関わりたいという人が増えてきているそうです。
渋谷をつなげる30人でも、参加者の視座やモチベーションが年々あがってきていると感じます。
企業から参加する人も「社外の人とコラボレーションすることで新しい価値を産みたい」と、明確に「越境しよう」という意思をもって臨まれる方が増えている印象です。
参加された方に伺うと、渋谷をつなげる30人のような「課外活動」をすることが、社内で評価されるようになってきたという声も聞きます。
こうして耳目や人が集まるのはいい傾向だと感じますね。
――世の中に大きく影響を及ぼすところだと、より多くの人が感じる流れが出来てきているのかもしれませんね。そういった「これから始動していく」人々にヒントやメッセージはありますか。
日比谷:イノベーターに、もっともっとパブリックセクターを身近に感じてもらえるようにしていきたいと思っています。
世の中に新たな価値や仕組みを提供していこうと思う方々は、パブリックセクターと接していくことで視野が広がり、自分たちの提供しようとする価値の定義が広がったり深まっていくのではないかと思いますね。
朝比奈:環境を変えるのは重要だと思います。
ある環境に慣れてしまうと「Active Non-action」に陥りがちです。つまり、忙しく懸命に頑張っているけど、明日死ぬと思った時に人生に本当に大事なことは実はできていない、というような状態です。
それが積み重なると「訓練された無能力(trained incapacity)」になり、「何かを変えよう」と挑戦することもなくなってしまいます。
だから、「何を変えよう」、「どう変えよう」と考えようとした際に環境を変えてみることで本質を見直す機会を持つことは重要になってきますね。
(協力:青山社中、写真:栫井 誠一郎、編集・記事制作・デザイン:深山 周作)
■PR「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」紹介
「青山社中リーダーシップ・公共政策学校」は、パブリックリーダーを育成することを目的とし、「リーダーシップ」と「政策」の両方を学ぶことをコンセプトにした学校です。霞が関出身、かつ各分野の第一人者であり、政治・行政の内情に精通する講師陣が講義を担当、今年度は、2020年10月~2021年3月にかけて全7講座を開講いたします。
本講座は、どの領域にも横断的に活躍する上で基礎となるリーダーシップ、コロナ下の最新政策情報や議論、オンライン配信によるインタラクティブな授業を提供することで、「社会を動かし、社会課題を解決する」政策人材の育成を目指します。