【注目】コロナ、スマートシティ、気候変動…。社会変革の“挑戦”に「損害保険」が必要なワケ。

新型コロナウイルスの蔓延、技術・データの国際覇権争い、気候変動…。激化する社会変革で、“リスク”は増大する。しかし、停滞せずに“挑戦”することを求められる。

それは国、企業、個人を問わない。

そうした不確実性の高いリスクに立ち向かう保険会社がある。渋沢栄一の提唱により誕生した東京海上日動だ。

保険会社というと言葉のイメージから「保守的」と感じている人も少なくないだろう。しかし、当時国策として展開された新産業である海運、製造業を支えるために設立された非常に「挑戦的」な経緯を持っている。

そうした成り立ちもあって、東京海上日動では中央省庁での勤務経験者(同社からの出向経験者を含む)が在籍し、常に政策、社会課題と連動したサービスや仕組みのR&Dが行われており、その官民連携の起点づくりを担う新規メンバーを募集しているという。

「政策×保険」の官民連携の裏側について、3名の社員から伺った。

“厚労省×医療団体×東京海上”で構築した約115万人が加入する医療従事者支援制度

新型コロナウイルスは、あらゆる領域に影響を与えたが、『医療業界』に与えた衝撃は最も甚大であっただろう。

感染力の強い新型コロナウイルスにおいて、医療従事者は、命の危機に数多くさらされ、労働環境も逼迫する。実際、この2-3年間で何度「医療崩壊」という言葉を聞いたか分からない程だ。

医療従事者の不安を少しでも軽くできないかと思ったんです」と、河合 弘樹さんは言う。

所属と役職は取材当時のものです

――河合さんは、経産省へ出向されているんですね。

東京海上日動 医療・福祉法人部 担当課長 河合 弘樹氏(以下、河合):新卒の就職活動の時、官僚になりたかったんですけど、落ちてしまって。

それで社会へ良い意味で大きな影響を与えられて、グローバルなキャリアも望めると思い、東京海上日動に入社したんですけど、まさか自分が経産省に出向するとは(笑)

その後、公務開発部という省庁とリレーションを取ってR&Dを行う部署で、経産省、厚労省を担当して、いまは医療・福祉業界の営業担当をしています。

中央省庁と内外で関わる経験があったから新型コロナウイルスと戦う医療従事者が大きなリスクを抱えている、という社会課題を知った時に「そのリスクを少しでも抑えられるかもしれない」と考えることが出来たと感じています。

――『新型コロナウイルス感染症対応 医療従事者支援制度』のことですね。

河合:ただでさえ負担の大きい医療従事者なので、その負担を軽減したい。そこで、厚労省や医療関係団体様の協力を得た仕組みが作れないかと思い立ちました。

このプロジェクトにおいて、私は厚労省、医療関係団体様からのご意見やご要望をお聞きし、社内関係部署と調整の上、制度に反映していく役割だったので、政策の流れや力学をイメージ出来ていたのは、かなり活きましたね。

――かなり調整が大変そうですね。

河合:各所にプランを持っていて、意見を反映して、、、の繰り返しでしたね(笑)厚労省へのアプローチは、古巣である公務開発部とも連携しました。

医療関係団体様も、厚労省も、医療従事者の負担軽減をしたい。

それぞれの想いに対して、保険商品として持続可能な仕組みで、かつ医療従事者の負担に寄り添うにはどうするかという試行錯誤でした。

その結果、医療従事者の経済的負担を実質ゼロにした仕組みを構築することが出来ました

――負担が実質ゼロというのは凄いですね。どういう仕組みですか。

河合:この制度では、医療従事者の方がコロナに罹患をし、4日以上休業したら30万円定額でお支払いし、万が一お亡くなりになられた場合は500万円をお支払いするというものです。

医療従事者が加入するには、保険料が1名あたり1,000円/年間なのですが、厚労省の補助金とコロナ禍で医療関係団体様に集まった寄付金を用いることで、この金額は実質ゼロになります。

新型コロナウイルス感染症対応医療従事者支援制度 2021|公益財団法人 日本医療機能評価機構

――保険料の算出は難しかったのではないですか?

河合:非常に大変でした。

正直、新型の感染症というデータもロクにない状態で「どの程度羅患者が出るのか」など分からない事ばかりでしたが、当社の商品業務部と何度もやりとりして、思い切ってこの数字にしました。

金額に限らず、制度が分かりづらいとお忙しい医療機関の先生方は利用をためらわれますので、申込方法など、「いかに利用する側に寄り添えるか」は非常にセンシティブになりますね。

でも、医療従事者の約115万人(「令和2年版厚生労働白書」の「医療関係従事者数」は約320万人)に加入して頂くことが出来ました。

――凄い数字ですね。

河合:ですね。ただ、感染者がバーンと増えたときに制度が耐えられるかは、これからではあります(笑)

――確かに。。。そういう不確定要素の多い中、よくトライ出来ましたね。

河合:実際、金額を含めて設計をする当社の商品業務部は、清水の舞台から飛び降りる思いだったと思います。

でも、一緒に挑戦をしてくれた。東京海上日動には、そういう挑戦的な文化や人が多いことに、とても感謝しています。

これから先、こういったニューリスクに保険会社は立ち向かっていく必要があるので、こうした組織文化は、とても重要な武器だと思います。

“デジタルツイン×防災”で「災害で傷つく人がいない街をつくる」

「総務省に出向した際、一緒に働くメンバーの“世の中のために働く”という思いの強さに衝撃を受けました」

田口 一徹さんは、続けて言う。

「それに影響を受けましたし、出向中に関わったIoTやAIといったデジタル関連の政策の知見が、現在行っている大手通信事業者とのスマートシティ事業に直接活きています」

所属と役職は取材当時のものです

――保険会社とスマートシティというとイメージがあまり無いのですが、都市開発の補償とかでしょうか。

東京海上日動 情報通信ソリューション部 課長代理 田口 一徹氏(以下、田口):もちろん、保険会社としてスマートシティに関わる事業者のリスクを保険で補償することも可能です。

それに併せて、現在はデジタルツイン(※)を活用した取り組みを検討しています。

※デジタルツイン:「デジタル空間上の双子」を意味し、現実の世界にある物理的な「モノ」から収集した様々なデータを、デジタル空間上にコピーし再現する技術のこと。 デジタルツインを用いると、将来の事象についてデジタル空間で予測をすることが可能になる。

――まだイメージが繋がっていないのですが、どういった取り組みなのでしょうか。

田口:具体的には、大手通信事業者と協業し、防災領域のプロジェクトを進めています。

保険会社には、例えば「どこで、どんな事故があった」というような事故データや過去からの事故削減のノウハウが数多くあります。

その事故データやノウハウをデジタルツイン上の都市に反映させ、様々な災害をシミュレーションし、都市計画や防災計画に反映させていくことで、災害時の少しでも想定外の事故を減らすお手伝いができればと考えています。

一言でいえば「災害で傷つく人がいない街をつくろう」という取り組みになります。

――とても壮大なプロジェクトですね!

田口:その通りです。デジタルツインというとバズワード的ですが、防災×デジタルツイン』は、とても将来性がある分野ではないかと思っています。

日本は、災害大国と言われてきました。ですが、そのある種コンプレックスであった災害の多さは、翻って災害関連のデータの多さでもあると考えています。

多くの災害を経験してきた日本だからこそ、世界に通用するソリューションを生み出せるのではないかと考えています。

―― 一方で、防災領域のスマートシティともなると、官にも民にも調整する箇所が多そうですね。

田口:多いですね(笑)

防災なので省庁であれば主に総務省、国交省、ほかにもスマートシティのフィールドとなる自治体を始め、色々な団体の方の力を貸していただくことが必要となります。

――もちろん、協業先の企業も。

田口:そうですね。

こうした官民の多くの方に力を貸していただく必要があるプロジェクトでは官民連携の橋渡しの場面において、特に総務省へ出向時の経験が活きています

出向中に数多く行った官民連携でのAIやIoTを活用した新規事業立案やプロジェクトマネジメントの経験はスマートシティプロジェクトの立ち上げに直接活きていますし、行政側の立場も経験したことがありますので。

私自身リスクコンサルタントとして社会の礎になりたいとずっと思っていておりましたので、社会をサポートするこのスマートシティプロジェクトに、手触り感を持てる立場で関われることに強いやりがいを感じています。

国益を重んじる渋沢栄一のDNA

公的な仕組みとの連動が多い保険。設立に渋沢栄一が関わっていることもあってか、東京海上日動には国益、国策と連動した事業を行っていくDNAがあるという。

そのため「公務開発部」と呼ばれる専門部隊がいる。その仕事について南 恵理さんに話を聞いた。

所属と役職は取材当時のものです

東京海上日動 公務開発部 課長代理 南 恵理氏(以下、南):東京海上日動では、『官民人事交流』の仕組みがあるのは知っていましたが、まさか自分が官公庁へ出向するとは思っていませんでした(笑)

――突然、だったんですか?

:はい。でも、民間企業では経験できない、省庁ならではの経験が盛り沢山でした。私は厚労省へ出向したのですが、一緒に働く官僚の人たちの仕事に対する熱量や使命感が物凄かったです。

――省庁勤務した方って皆さん、そう言いますね(笑)ちなみに公務開発部って、どのような仕事をされているんでしょうか。

:省庁とリレーションを取って、その人脈を活かして政策と連動した保険商品の開発等を行っていて、私の場合は、主に出向していた厚労省を担当しています。公務開発部では、各担当は複数の省庁を担当することになっています。

政策は、国が予算を確保して社会課題を解決するというものがありますが、国の政策では馴染まない、または国の予算の中では解決できないような「空白」の社会課題に対して、民間保険が解決の糸口にならないか、何かお役に立てないかを考える仕事です。

――話を聞くまで考えたことがなかったのですが、民間保険自体が政策の補完的な側面があるんですね。

:そうかもしれません。

決まった仕事のやり方はなく、自ら日々の報道等で得られる情報や、省庁の方々との対話の中から、社会課題の「空白部分」を保険でどのように埋めるか考えていくといった自律性が求められます。

――ルート営業的でもあり、企画的でもあり、事業開発的でもありますね。

:政策と連動した動きになるので、中長期的な動きが求められるのも特徴です。

マニュアルに落としづらい業務なので、基本的にはOJTで仕事を学んでいきます。今でも日々、真っ白いキャンパスの前で悩みながら、考え行動しています(笑)

――それも自律性が求められる所以ですかね。

:はい。そういう意味では、自ら動いて、プロジェクトを生み出していくということが好きな人にとってはうってつけの環境だと思います。フットワークの軽さも大事になってきます。

加えて、日々国の政策の動きや、新しい社会課題の情報を収集していく必要がある仕事ですので、そういった情報を敏感にキャッチできる人も向いていると思います。

実際、当部には中央省庁から出向して当社に在籍している社員もいますし、私のように省庁への出向経験者等、省庁経験者の社員が多いですね。官民双方の仕事を経験したからこそできる仕事なんだと思います。

――南さん自身はどうですか。

:自分に当てはめると「はい」と素直に言うのは気恥ずかしいですけど(笑)

出向してから、世の中にどのような社会課題が起きているのか、といったことへの関心がとても高まりました。私の担当する厚労省関連の政策では、「困っている人」の困っている要素を軽減させたり、ゼロにするような領域が多いです。

保険には「挑戦を後押しする」という側面もありますが、保険によって「安心して暮らせる」という役割が土台にありますので、「安心して暮らせる」社会の実現を目指し、厚労省の政策と連動させた新しい保険の仕組みを作っていけたらと思います。

関連するジョブオファー ※募集終了

【求人概要】
・エントリー期限:2022年6月20日に募集は終了しました。
・募集企業:東京海上日動火災保険株式会社
・応募職種:総合職グローバルコース
・給与:年収500万円~1,500万円
・募集人数:若干名
・必要スキル(英語スキルなど語学力は問わない。)
(1)対人対応能力、企画・立案能力。
(2)中央省庁での業務経験があり、現在は民間で働いているものの、パブリックに関わる仕事がしたいと考えている方。民間での企画・立案部門での経験がある方。※現役官僚は不可

・業務内容
(1)中央省庁の国策に連動した、保険の新たな仕組み・枠組みを創出する。そのためのR&D(情報収集、調査・研究、仕組みや商品の開発)を実践する。
(2)当社経営・商品開発・企画部門と省庁を結ぶ窓口機能、仲介業務を行う。