【東京五輪】波乱万丈の運営方針、5つのポイントをおさらい。

開催まで1か月を切った東京オリンピック。

観客を入れることの是非、そもそも開催をすることの是非、国民を巻き込んで大きな議論を巻き起こしながら「人数制限を設けた上での有観客開催」が、政府の方針としてはほぼ決定している。

このことに関してメディア等では、さまざまな視点から批評が繰り広げられている。

そこで、新型コロナ禍の中で開催される東京オリンピックのオペレーションで、議論のテーマとなっているポイントをいくつかピックアップして解説していこう。

観客数の上限は「収容定員50%以内で1万人」

まず、これまで大きな論点のひとつとなっていた「観客の有無」についてだ。

現時点では「収容定員50%以内で1万人」を上限として、有観客にて開催することとなった。

東京五輪の観客上限1万人 5者協議決定 感染拡大なら無観客検討|毎日新聞

この「収容定員50%以内で1万人」という条件は、まず6月17日に新型コロナウイルス感染症対策分科会において政府が示した。

そして、6月21日に東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者を交えた5者協議で決定されたものと報じられている。

より詳しく説明すると、政府はイベント開催制限等について、下図のような内容を示している。

内閣官房「基本的対処方針に基づく催物の開催制限、施設の使用制限等に係る留意事項について」より引用

「収容定員50%以内で1万人」は、上の図でいう「経過措置」に該当する。

この「経過措置」は、緊急事態宣言等の解除前後で人数上限が大きく変わってしまうことに対する緩和措置として設けられたルールであり、今回新たに登場した措置ではなく、前回の緊急事態宣言後にも設けられたものだ。

6月末現在、東京都は「まん延防止等重点措置」の実施区域となっているが、その実施期間は7月11日までとなっている。要は「収容定員50%以内で1万人」という条件は、まん延防止等重点措置が解除されることが前提となっているのだ。

東京2020組織委員会も、公式ウェブサイトにて「7月12日以降、緊急事態宣言またはまん延防止等重点措置が発動された場合の観客の取り扱いについては、無観客も含め当該措置が発動された時の措置内容を踏まえた対応を基本とする。」と表明している。

万が一、まん延防止等重点措置が延長されたり、緊急事態宣言が発令された場合には、人数上限は「5,000人」にまで制限されることになる。もちろん、組織委員会独自の判断として「無観客開催」に踏み切る可能性もゼロではないだろう。

一応は「収容定員50%以内で1万人」で開催されることが決まっているが、今後の新型コロナの感染状況次第では、より制限が強まる可能性がまだある訳だ。

「開会式のみ2万人」をどう解釈するか。

オリンピックの観客数に関連して、「開会式のみ2万人を入れて行なわれる」といった報道があり、批判の的となっている。

これについても解説すると、「開会式のみ特例として観客の数を2万人とする」ということではない。

オリンピックの開会式では「観客」以外の人員が多く参加することが通例となっているため、これを含めて「2万人」が「入場」することになるというのが「開会式のみ2万人」という報道の適切な解釈だ。

「観客」以外の人員とは、IOC関係者、各国首脳、IF(国際競技連盟)代表、スポンサーおよびその招待客などが該当する。こうした「観客」以外の人員の入場をどこまで削減できるか、現在検討が進められている。

ただ、この「観客」以外を「五輪貴族」と揶揄し、上限をさらに広げる方針に批判が殺到した流れだ。

この点について組織委員会の武藤事務総長は、開会式の入場者数は「2万人」よりは少なくなることを明言しているが、具体的な数字を示すには至っていない。

引き続き注視しておくべきポイントと言えよう。

会場内での飲酒は禁止へ。観客には「直行・直帰」を呼びかけ

平常時であればスポーツイベントにおいて「お酒」は、観戦の楽しさを増幅し、観客同士のコミュニケーションも活性化させる重要なツールとなる。

東京オリンピックについても当初は、時間帯等を制限した上で、会場内での酒類の販売が認められる方向で検討が進められていることが報じられていた。

しかし、報道後の国内の世論等を考慮したのか、結局は会場内での酒類販売は無し、飲酒も禁止の方向に転換して話が進んでいる。

また、組織委員会の公式ウェブサイトでは、観客に対して「直行・直帰」が呼びかけられている。新型コロナ感染拡大抑止の観点からは、人の流れを極力抑えることが重要でがあることから、「直行・直帰」の呼びかけは当然必要なものだと言えよう。

しかし、著者個人の考えとしては、観客全員がこれを徹底するのは相当難しいと言わざるを得ない。

帰宅が夜になったら、帰ってから食事を作るのは大変だからと、帰路にある飲食店で夕飯を済ます人も出てくるだろう。まん延防止等重点措置が解除されれば、飲食店等に対して営業時間や酒類の提供を制限するよう要請を出すこともできなくなる。

会場内では飲酒ができなくとも、会場周辺等においては飲食店等に人が流れ込み、人流が大幅に増えることが容易に予見できる訳だ。

そうなった場合の政府や組織委員会の対処も注視が必要なポイントと言えるだろう。

選手村での飲酒は自室で一人ならOK

同じく、世論から厳しい意見が出ているものとして、選手村におけるアスリートの飲酒が挙げられる。結果としては、自室などのプライベートな空間での一人飲みのみOKという形に収まりつつある。

しかし、特に飲酒に関しては、実際にルールを厳守させることができるか、もしルール違反が発覚した場合には相応の措置をとることができるかが、より重要なポイントになるだろう。

世界中から多様な文化的背景、価値観、考え方を持つ人々が集まるオリンピックにおいては、参加者に対してルールを適切に理解し、徹底させることは容易なことではない。実際に、過去のオリンピックでも大小さまざまな「事件」が発生している。

飲酒も含めた新型コロナ感染拡大のルール徹底は、まさに組織委員会のマネジメント力が試される試金石と言える。

ちなみに、ごく一部の報道では、IOCから組織委員会に対して、飲食宅配サービスの利用を認めるよう要請が出されていることが報じられている

しかし、そもそも選手村では、アスリート等の利用者や選手村の運営に関係する業者以外の出入りが規制され、入場には顔認証などによるセキュリティチェックが必要になる。

この情報ソースは「複数の大会関係者への取材」ということだが、IOCからの要請という報道自体がにわかには信じ難いものではある。だが、事実であれば、遺憾ともし難い。

ライブサイト・パブリックビューイングは自治体の判断

ライブサイトやパブリックビューイングの開催の是非も、東京オリンピックに関する議論のテーマのひとつとなっている。

特に批判を集めていた代々木公園および井の頭恩賜公園については中止が決定、ワクチン接種会場へ転用する方針で話が進められている。

東京オリンピックにおけるライブサイトやパブリックビューイングは、実施主体等によりいくつかの区分に分かれている。

東京2020組織委員会「ライブサイト」および各種メディア報道を参照

これらのうち、都と組織委員会が行なう「東京2020ライブサイト」はすべて中止する方針が示されている。一方で、地方自治体等が行なうものについては、組織委員会は自治体の考えを尊重する方針を示している。

現時点では、首都圏を中心にいくつかの自治体は、都と同様に中止を決定しているものの、まだ検討中の自治体もある。また、上表には書ききれなかったが、ライブサイトやパブリックビューイングは市区町村により計画されているものもあり、これらも中止を決定済の自治体と検討中の自治体が混在している状況にある。

今後はこれら自治体におけるライブサイト・パブリックビューイングの開催の有無や、開催する場合の新型コロナ感染拡大対策に注目が集まるだろう。

今後の焦点は、7月12日以降の新型コロナ措置

今回、東京オリンピックのオペレーションに関して、いくつかのポイントをピックアップして解説してきた。

重要なことは、現時点で公表されている東京オリンピックのオペレーションは、「7月12日以降は都のまん延防止等重点措置が解除される」ことを前提としていることだ。

残念ながら6月21日以降、新型コロナの感染状況は再び悪化の兆しを見せ始めている。今後もしこの傾向が続くならば、まん延防止等重点措置の継続、場合によっては緊急事態宣言の再発例という判断がなされる可能性もあるだろう。

そうなった場合には、東京オリンピックのオペレーションについても、より厳しい措置が求められるのは必然だ。

もちろん、組織委員会の内部では、そうした場合のオペレーションについても並行して議論が進められていると考えられるし、そう信じたい。

しかし、開催まで数週間という直前のタイミングでのオペレーションの変更は、関係自治体や観客にも影響が出ることを避けられないだろう。

東京オリンピック開幕まであと数週間。組織委員会にとっては短いようで長い、最大の試練の時が訪れている。

引用・出典・参考

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