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新型コロナウイルスに対する「まん延防止等重点措置」の実施からおよそ3週間が経ったが、新型コロナの感染は抑えるどころか、その勢いを一段と増しているかのように見える。
また、感染拡大第4波発生の懸念に加え、重症化・感染の速度が速いとも言われる「変異株」「変異ウイルス」のまん延という新たな脅威が、私たちの生命と生活を脅かし始めている。
4度目にして最大の危機に対して政府は、4月23日に3度目となる「緊急事態宣言」の発令を宣言した。新型コロナの感染拡大という危機を抑えられるかどうかは、緊急事態宣言に対する私たち国民の行動変容に懸かっていると意識するべきだろう。
そこで今回は、3度目の緊急事態宣言の内容を過去2度の緊急事態宣言の比較しながら具体的に解説していく。
3度目の緊急事態宣言の内容と過去の宣言時との違い
さっそく、今回3度目となった緊急事態宣言の具体的な措置内容を、過去の宣言時と比較しながら見ていこう。なお今回は、対象地域全体に適用された措置内容について見ていく。
※詳細な措置内容や都府県独自の取組については、各都府県のホームページ等でご確認いただきたい。
実施期間|3度目は最も短い実施期間
今回の緊急事態宣言の実施期間は、現時点では2021年4月25日から5月11日までの17日間となっている。1度目、2度目の発出時当初の日数と比較して短いことから「なんとか短期間で決着をつけたい」という政府の思惑が見て取れる。
ただし注目すべきは、1度目と2度目ともに、発出後に期間が再延長されており、1度目はプラス19日の49日間、2度目に至ってはプラス42日の73日間まで伸びている点だ。過去2度の例にならえば今回も期間が再延長される可能性はそれなりに高いと言えるだろう。実際に、政府の基本的対処方針分科会の尾身会長も「11日までにステージ3になっていなければ延長もあり得る」と述べている。
対象地域|1都2府1県が対象
今回の緊急事態宣言の対象地域は、東京・大阪・京都・兵庫の1都2府1県となっている。これも1度目(1都1府5県)と比べれば限定されていることから、「地域を限定して経済への影響を押さえたい」政府の意図があると見てよいだろう。
ただし、実施期間と同様に、対象地域についても1度目、2度目ともに発出後に対象が拡大されている。特に1度目については結局、対象地域が全国にまで広まっている。今回の緊急事態宣言でも今後、対象地域が拡大されていく可能性を頭に入れておくべきだろう。
国民の行動
国民の行動に関しては、1度目、2度目の緊急事態宣言と同様に「不要不急の外出や移動の自粛要請」および「都道府県間の移動の自粛要請」が行なわれる。
ここで注意すべきなのは、1度目と2度目、そして今回3度目の緊急事態宣言においても、これらの自粛要請は新型コロナ特措法に基づく要請として出されていることから、その重みは基本的には同じである点だ。
ところが、前回2度目の緊急事態宣言では「特に20時以降については徹底する」という内容だったはずが、政府やメディアはその点のみを強調するようなメッセージを出してしまった。そのため「20時以降のみ外出自粛」という誤った認識が広まってしまう結果となった。
今回の緊急事態宣言では、路上での集団飲酒、いわゆる「路上飲み」に対する注意喚起も行われる。かといって、路上飲みさえしなければ外出自粛をしなくても良い、という訳では当然ないことを認識しておくべきだろう。
店舗・施設|いままでより一層の締め付け
今回の緊急事態宣言で特筆すべきは、店舗・施設への対応だ。特に飲食店に対しては、これまでも営業時間の短縮要請が行われてきたが、今回は酒・カラオケを提供する店舗に対しては休業要請が行なわれる。すなわち、過去2度の緊急事態宣言と比較して厳しい措置内容になっている訳だ。
また、デパートや百貨店、ショッピングセンター、映画館、美術館、動物園、テーマパークなどといった1,000㎡を超える施設等に対しては「生活必需品を販売する店舗」を除き休業要請が行なわれる。
1度目の緊急事態宣言では、休業要請が出されていないスーパーマーケット等にて食料品や消耗品等の買い占めが発生した。
しかし、繰り返しになるが「生活必需品を販売する店舗」については休業要請は行なわれないし、物流が止まることもない。過度に必要以上の量を買い込む行為をせず、冷静に買い物をすることが望ましい。
イベント|原則、無観客での開催
イベントに関しては、今回は社会生活の維持に必要なものを除き、原則、無観客での開催が要請される。1度目の緊急事態宣言においては開催自体に自粛要請が出され、実際にJリーグやプロ野球等のリーグ戦やコンサートイベントが中止になった(Jリーグやプロ野球は緊急事態宣言前から各リーグの判断でストップしていた)。
著者自身も含めファンの立場からは「開催されるだけマシ」と捉えることもできるが、「社会生活の維持に必要なもの」という前提条件については「誰が判断するのか?」という疑問を持たざるを得ないだろう。
なお今回は、4月25日の開催分についてのみ、チケットキャンセルによる混乱が予想される場合は観客を入れての開催が認められ、実際に有観客で開催された試合もあった。26日以降のイベントに関してはは無観客が要請され、多くのイベントが従うことが予想されるので、チケットをすでに購入している場合は、イベント主催者のホームページ等にて払い戻しの情報を確認しよう。
学校
学校(小・中・高校)については2度目と同様、1度目の緊急事態宣言時にあったような休校要請は行なわれない。ただし、部活動などの感染リスクの高い活動については制限するよう要請される見込みだ。
1都2府1県以外の地域への対応
緊急事態宣言が出された1都2府1県以外の地域でも、まん延防止等重点措置による対応にいくつか変更が加わっている。
まず今回、新たに愛媛県が重点措置の実施区域に加えられた。実施期間は4月25日から5月11日までの16日間だ。また、すでに実施区域となっている宮城県と沖縄県については、実施期間の終了が5月5日から11日に延長されている。また、市区町村単位で実施区域を拡大している都道府県もあるので、念のため自分が生活している自治体のホームページ等を確認しておくと良いだろう。
他にも、岐阜県は重点措置を適用するよう政府に要請する方針を固めたほか、北海道も適用を要請することを検討している。いずれにしろ、どの地域でも今後、感染拡大状況によっては重点措置や緊急事態宣言の対象となる可能性があるので、今後の動向には注意が必要だ。
まとめ
今回は、3度目の緊急事態宣言の内容について、過去2度の緊急事態宣言との比較をしながら具体的に解説してきた。
現時点では、3度目の緊急事態宣言は、過去2度の緊急事態宣言と比較して「短期間かつ収集的な」措置内容となっている。しかし今後、過去2度の緊急事態宣言と同様、期間が延長されたり、対象地域が拡大していったりする可能性は十分にあると見てよいだろう。
新型コロナの感染拡大は、政治家が緊急事態を宣言すれば抑えられるわけではない。重要なのは、我々国民ができる範囲で「感染しない」「感染させない」ために、具体的に行動を変容することだ。
消毒の徹底などによる職場での感染予防対策から、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保などによる個人の感染予防対策まで、私たち日本人は実直に新型コロナ対策の行動を実現してきた。その甲斐もあり、人口あたりの感染者数および死亡者数は、国際的に見れば少ない水準に保たれている。
今から数週間後の感染者数は、私たち一人ひとりが今とる行動が決定する。このことを肝に銘じて、できる範囲で着実に行動変容を具現化していくことが重要だ。
引用・出典・参考
東京 大阪 兵庫 京都に緊急事態宣言 25日~来月11日 政府決定|NHK
緊急事態宣言3度目の発令 4都府県に、25日から5月11日|日本経済新聞