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SDGsとは「持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals」の略称で、国連に加盟する193か国が2016年から2030年までの15年間で達成すべき目標だ。
SDGsには、様々な社会問題に関する目標が定められているが、日本では環境やジェンダー分野で引用されることが多い。
今回は、SDGsの意義やこれまでの国内での取組や課題について、政府の取組を読み解きながら解説していく。
第1回目は、「日本においてSDGsが求められている背景や国内の取組に焦点」を当て、解説していく。
SDGsをめぐる国際的な背景
SDGsの前身は、MDGs(ミレニアム開発目標:Millennium Development Goals)と呼ばれる目標だ。MDGsは、1990年代に国際会議で採択された国際開発目標と、2000年に採択された「国連ミレニアム宣言」を統合した目標だ。
MDGsは8つの目標と21のターゲット、60の指標が設定されており、達成期限の2015年までに世界で一定の成果を残すことができた。
例えば、第一の目標である「極度の貧困と飢餓の撲滅」では、「1日1.25米ドル未満で生活する人口の割合を半減させる」という目標をクリアしている。また、感染症においても2000年から2014年までの新規HIV感染者数が約35%減少するなど、大きな成果が見られた。
一方で、教育や妊産婦の健康に関する指標など、目標が達成できなかった分野も存在した。これらの残された課題はSDGsにおいても盛り込まれることになった。
SDGsの17の目標と169のターゲット
SDGsは、2015年9月に開催された国連サミットにて、全会一致で採択された。
17の目標と169のターゲットが設定されたSDGsは、「誰ひとり取り残さない」ことをスローガンに掲げ、①MDGsで達成できなかった課題、②MDGsには含まれなかった課題、③新たに浮上した課題の3要素を含んだ目標となっている。
SDGsは、途上国だけではなく先進国も積極的に取り組むべき目標とされており、この目標に取組むことで持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現することを目指すものだ。
SDGsの169のターゲット
SDGsでは17の目標にそれぞれターゲットが設定されている。ターゲットには具体的な数値目標が設定されていることもあれば、抽象的な表現で書かれているものもある。
例えば、最初の目標である「貧困をなくそう」では、以下のようなターゲットが設定されている。
なお、169のターゲットの下にはさらに細かな244の指標も設定されている。これらの詳細は、総務省の和訳資料で確認することができる。
貧困やジェンダー問題は決して途上国だけの問題ではない
SDGsの1~6項目は、貧困や教育、ジェンダーなど、途上国に焦点を当てた目標のように見える。しかし、厚労省の「2019年国民生活基礎調査の概況」によれば、日本の子どもは貧困率13.5%、実に7人に1人が貧困状態にあるとされており、貧困問題は決して途上国だけの問題ではないことがわかる。
また、目標5に掲げられているジェンダー平等に関しても、調査対象153か国のうち121位となるなど課題が残る。
このように、SDGsの最初の6項目に関しても決して途上国だけの問題ではなく、現在の日本が向き合わない問題も含まれている。
項目の7以降は、エネルギー問題や国内外の格差の是正、気候や環境への配慮など、先進国が率先して取り組むべき目標が設定されている。
日本におけるSDGsの展開
日本では、2016年5月20日に当時の安倍総理を本部長、全国務大臣をメンバーとして、第1回「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催された。第1回の会合では、SDGs実施のために日本独自の指針を策定すると安倍首相が発言した。
同年12月22日に行われた第2回の会合では、決定した指針に経済、社会、環境の分野での8つの優先課題と140の施策が打ち出された。議事録の中では、国際保健機関に対して総額約4億ドルの支援、難民問題への対応で新たに5億ドルの支援、「女性が輝く社会」の実現に30億ドルの以上の取組を行うことが述べられている。
また、政府は2019年末に「SDGsアクションプラン2020」を策定し、より具体的な施策を展開している。アクションプランに関しては、次回詳しく解説する。
サステナビリティと金融市場
持続可能な社会を推進するための取組は、各国政府だけでなく金融市場でも展開されている。
それが、ここ最近国内でも耳にする機会の増えているESG投資だ。
社会を持続可能にするためには、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの要素を考える必要があり、この3つを合わせてESGと呼ぶ。そして、このESGに配慮した投資活動のことをESG投資と呼び、近年注目を集めている。
これまで投資家は、短期的な利益のために環境や社会への配慮に欠けた企業活動に対して投資を行うことが多かった。
しかし、最近では投資家が中長期的な企業活動に対して投資をする傾向が強くなり、短期的に環境や労働者を消費する企業への投資が避けられるようになった。つまり、SDGsに親和的な企業にESG投資が行われるようになっているのだ。
ESG投資は個別に銘柄を購入することもできるが、日本国内の証券会社でも取り扱っており、投資信託としてESG要素で評価した銘柄を購入することができる。
ESGは2000年代にブームになった「エコファンド」のような社会貢献に傾倒した投資活動とは異なり、中長期的な投資リターンを期待できることが前提となっている。そのため、ESG投資は「長期的に見ればESGの要素がある企業の方がパフォーマンスが発揮できるはず」という思想を持っている。
日本のESG投資の先駆けとなったGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が選んだESG指数は、2017年4月から2020年3月までの年率リターンがTOPIX(東証株価指数)の成績を上回っている。
今後は個人の投資活動においても、環境や社会への配慮が重要な指標と見なされるだろう。
SDGsに関する政府の動き
SDGsへの取組は、政府だけでなく民間企業など様々な利害関係者の中で議論される必要がある。国内においては、先に紹介した持続可能な開発目標(SDGs)推進本部だけではなく、持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議においても議論されている。
同会議は、SDGsへの取組を広範な関係者が協力して推進していくため、行政やNGO、NPO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体等の関係者が意見交換を行うことを目的とし、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部の下に設置されている。
会議は2020年12月現在まで全10回開かれている。2020年7月に行われた第10回では、新型コロナウイルス感染症が拡大する中でSDGsにより社会問題を解決するため、推進本部に対して「SDGsでコロナ危機を克服し、持続可能な社会をつくるためのSDGs推進円卓会議構成員による提言」が提出された。
提言では、SDGsを羅針盤とした中長期的なコロナ対策を行うこと、補正予算の編成時にSDGsを取り入れることなどが盛り込まれた。これに対して政府は、SDGsの基本理念である「誰ひとり取り残さない」ことを念頭に入れた安全保障、ポストコロナ時代における「新たな日常」の早期実現に向けてSDGsを推進していくと返答している。
政府がSDGsに関する指針「SDGsアクションプラン2020」を示したのは2019年12月であり、それから数カ月で新型コロナウイルス感染症が世界の経済や生活を激変させた。
コロナが流行してから初めての冬になり、感染者も再び増加する中で、コロナの収束、ポストコロナに向けていかに持続可能な社会を築くかが課題となる。
次回は、「SDGsアクションプラン2020」の詳細について詳しく解説していこう。